2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧

スタン・ゲッツ・アット・ザ・シュライン

スタン・ゲッツ・アット・ザ・シュラインアーティスト: スタン・ゲッツ出版社/メーカー: UNIVERSAL CLASSICS(P)(M)発売日: 2008/11/25メディア: CD クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見る テナー・サックス奏者スタン・ゲッツが1954年11月8日、ロ…

潤一郎ラビリンス (12)

潤一郎ラビリンス〈12〉神と人との間 (中公文庫)作者: 谷崎潤一郎出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1999/04/18メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (8件) を見る 長編 『神と人の間』、短編 『既婚者と離婚者』、『鶴唳(かくれ…

永井荷風 『つゆのあとさき』

銀座のカフェーで女給をしている君江は、男性客と片っ端から関係している。 ……十七の秋家を出て東京に来てから、この四年間に肌をふれた男の数は何人だか知れないほどであるが、君江は今以って小説などで見るような恋愛を要求したことがない。従って嫉妬とい…

村上春樹とワタナベ・ノボル

ワタナベ・ノボル お前はどこにいるのだ? ねじまき鳥はお前のねじを 巻かなかったのか? 村上春樹 『ねじまき鳥と火曜日の女たち』 村上春樹の小説には、渡辺昇=ワタナベ・ノボルという名前がよく出てくる。よく出てくる割に、その実体がよくわからないのが…

チャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングス

モダン・ジャズの神様、アルト・サックスの天才チャーリー・パーカーのアルバムを1枚選べと言われたら、僕はこれっぽっちも迷わず 「ウィズ・ストリングス」(1949〜50、52年録音) を推す。 パーカーの超ハイ・テクニックなアドリブ演奏を楽しみたいなら、…

村上春樹 『パン屋再襲撃』

「もう一度パン屋を襲うのよ。それも今すぐにね」と彼女は断言した。「それ以外にこの呪いをとく方法はないわ」 村上春樹 『パン屋再襲撃』 短編集 『パン屋再襲撃』 を再読。 表題作は 『パン』(原題 『パン屋襲撃』。『夢で会いましょう』(講談社文庫)…

『上海』 読了

横光利一 『上海』 - 蟹亭奇譚の続き。 建物と建物との間から、またひと流れの黄包車*1が流れて来た。その流れが辻毎に合すると、更に緊密して行く車に車夫達の姿は見えなくなり、人々は波の上に半身を浮べた無言の群衆となって、同じ速度で辷(すべ)ってい…

カール・リヒター/J・S・バッハ 『ブランデンブルク協奏曲』

リヒターの 『ブランデンブルク協奏曲』 を YouTube で発見したのでリンク。 ブランデンブルク協奏曲第5番第1楽章。6分30秒過ぎからのチェンバロ・ソロは鬼気迫る演奏である。バッハ:ブランデンブルク協奏曲アーティスト: ミュンヘン・バッハ管弦楽団,バッハ…

「バド・パウエルの芸術」

バド・パウエルの芸術アーティスト: バド・パウエル,カーリー・ラッセル,マックス・ローチ出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン発売日: 1995/04/26メディア: CD クリック: 4回この商品を含むブログ (17件) を見る 原題 "The Bud Powell Trio"。天才肌…

人生は限られている

http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20091119 全部読んでから何か言え、というのは正論だが、人生は限られている。私は『夜明け前』を四分の三しか読んでいない。もしそれで誰かが、残り四分の一が面白いのだ、と言ったら続きを読むだろう。時には十ページで…

横光利一 『上海』

横光利一の長編小説 『上海』 は昭和3〜6年に雑誌 『改造』 に掲載され、手を加えられて昭和7年に単行本として刊行された。その後、さらに作者が手を加えて昭和10年に 「決定版」 と銘打って再刊されている。現在、講談社文芸文庫と岩波文庫から出版されてい…

『武器よさらば』 結末(ねたばれ)と感想を少しだけ

ヘンリーは、キャサリンと同僚のイギリス人看護婦ファーガスンの二人にマッジョーレ湖畔のリゾートで再会する。マッジョーレ湖はイタリアとスイスにまたがる観光地だが、10月はシーズンオフだ。 ヘンリーが恋人とホテルで楽しいひと時を過ごしていると、ある…

スーパー・ヒーロー

ヘンリーは前線に復帰する。だが、戦況は悪化し、兵士たちは疲弊していた。そして、ついに退却命令が下る。ヘンリーは部下とともに退却を開始する。しかし、地元の農民も同時に避難を始めたから道路は大混雑。混乱の中、彼は車両を捨て、部下を失う。さらに…

ヒーロー

1917年夏、ヘンリーは松葉杖を使わずに歩けるまで回復した。単独で外出できるようになった代りに、付き添いと称してキャサリンとデートすることは許されなくなったというシチュエーションである。彼はミラノのバーで数人の知人と会う。その中に、エットーレ…

セカンド・オピニオン

前線で負傷したヘンリーは、ミラノのアメリカ兵専用病院へ転院する。そこへなぜか、以前の任地で知り合った恋人の 《看護師*1》 キャサリン・バークリーが転任してくる。ヘンリー君、もうやりたい放題である。 ヘンリーの膝には被弾した際の破片が残っている…

迫撃砲

1917年、アメリカ人の主人公 《ぼく》 ことフレドリック・ヘンリー中尉は、赤十字義勇兵としてイタリア軍に加わっていた*1。彼の任務は前線で負傷した兵士を搬送車両に乗せ、後方まで送り届けることである。作戦の場所はオーストリア国境付近の山岳地帯。夜…

ヘミングウェイ 『武器よさらば』

『武器よさらば』 は1929年に発表された長編小説。 ヘミングウェイの長編は初挑戦。短編はいくつか読んだことがあるのだが、かなり技巧的な小説を書くひとだと思った。長編はいかがなものか。 50ページくらい読んだのだけど、事件らしい事件が起こらない。文…

ル=グウィン 『ゲド戦記1 影との戦い』

1を読むのは3回目。まとまらないので箇条書き。 4までしか読んだことがなかった。今回は岩波少年文庫で6まで読むつもり。 以前読んだときは、1と3が面白いと思った。主人公の冒険が多いからだろう。でも、2が一番好きという人もいる。 1は過去2回読ん…

立冬を過ぎた頃

飼い猫に蒲団取られし冬の朝 北風の突き刺さること針のごと 木枯しや人影もなき不動尊 木枯しの音のみ響くヘッドホン 立冬や先生の馬鹿とつぶやく

谷崎潤一郎 『過酸化マンガン水の夢』

『過酸化マンガン水の夢』 は昭和30年に発表された日記形式の短編小説。フィクションなのだろうけど、自著に言及している箇所があるので、主人公は谷崎自身といってよいだろう。 ……田村町の某と云う中華料理店に夕食をたべに行く。高血壓以来中華料理は兎角…

谷崎潤一郎 『青塚氏の話』

映画監督中田は一人の中年男に出会う。男は、中田の妻であり女優の由良子が主演する映画は全て、何度も見ており、彼女の身体の隅々まで覚えているのだと云う。 「君は由良子嬢の体に就いては、此の世の中の誰よりも自分が一番よく知っている積りなのかい?」…

小春日和

小春日やリハビリ通う三十分

谷崎潤一郎 『人面疽』

アメリカで成功し帰国した女優歌川百合枝は、自分が主演する怪奇映画が東京の場末の映画館で上映されている噂を耳にする。 ……けれどもどうしても、彼女にはそう云う劇を演じた記憶が残って居なかった。尤も、フィルムへ写し取る為めに劇を演ずる場合には、普…

潤一郎ラビリンス (11)

潤一郎ラビリンス〈11〉銀幕の彼方 (中公文庫)作者: 谷崎潤一郎,千葉俊二出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1999/03/18メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (7件) を見る 短編小説 『人面疽』、『アヹ・マリア』、『青塚氏の話』、『過酸…

村上春樹 『神の子どもたちはみな踊る』

「三宅さんってさ、ひょっとしてどこかに奥さんがいるんじゃないの?」 (中略) 「子どももいるの?」 「ああ。いる。二人もいる」 「神戸にいるんだね」 「あそこに家があるからな。たぶんまだそこに住んどるやろな」 「神戸のなんていうところ?」 「東灘…

横光利一 『微笑』

太平洋戦争末期、主人公梶の元に青年天才科学者が現れる。青年は 「凄い光線」 で敵艦や飛行機を一撃で倒す秘密兵器を発明、開発しているのだという。 「じゃ、二十一歳の博士か。そんな若い博士は初めてでしょう」 「そんなことも云ってました。通った論文…

アメリカ TV ドラマのアバンタイトル

アバンタイトルの謎 - 猫を償うに猫をもってせよ 「アバンタイトル」 という呼称は、僕も初めて知ったのですが、TV ドラマや映画のオープニング・テーマの前に挿入されるプロローグ・シーン(英語では prologue scene でいいのかな?)のことをアバンタイト…

横光利一 『機械』

初めの間は私は私の家の主人が狂人ではないのかとときどき思った。 横光利一 『機械』 冒頭にこんなことが書かれているが、どう考えても狂っているのは語り手の 《私》 のほうである。そう解釈するほうが辻褄があう。《私》 が住み込みで働くネームプレート…

横光利一 『時間』

私達を養っていてくれた座長が外出したまま一週間しても一向に帰って来ないので、或る日高木が座長の残していった行李を開けてみると中には何も這入(はい)っていない。さアそれからがたいへんになった。座長は私達を残して逃げていったということが皆の頭…

横光利一 『蠅』

真夏の宿場は空虚であった。ただ眼の大きな一疋の蠅だけは、薄暗い厩(うまや)の隅の蜘蛛の巣にひっかかると、後肢で網を跳ねつつ暫(しばら)くぶらぶらと揺れていた。と、豆のようにぼたりと落ちた。そうして、馬糞の重みに斜めに突き立っている藁の端か…