2008-12-01から1ヶ月間の記事一覧

水村美苗 『本格小説』

もったいぶったタイトルにどん引きしてしまい、長いこと手に取らなかったのだが、『本格小説』 (2002年発表)は非常に面白い小説だった。新潮社インタビュー - 水村美苗 『嵐が丘』の奇跡をもう一度 上記インタビューで作者本人が述べているとおり、本作は…

『江戸川乱歩傑作選』

江戸川乱歩の初期の代表的な作品を集めた短編集。大正12年の処女作、『二銭銅貨』 から昭和4年の傑作、『芋虫』 まで、乱歩の名作はこの時期に集中して書かれている。 大半は過去に読んだことがあるのだけれど、一般的な推理小説と違って、結末を知っていて…

NHKドラマ 「母恋ひの記」

NHKドラマホームページ : NHKドラマニュース2008 谷崎潤一郎の小説 『少将滋幹の母』 をドラマ化した 《NHK ドラマ 時代劇スペシャル「母恋ひの記」》 を見た。 原作は昭和24〜25年に新聞連載された中編小説で、谷崎にとっては戦後の自由奔放な時期の作品に…

『文學界』 インタビュー 水村美苗×鴻巣友季子 「日本語は亡びるのか」

『文學界』 2009年1月号に掲載されたインタビュー 水村美苗×鴻巣友季子 「日本語は亡びるのか」 を読んだ。 インタビューされるのは、エッセイ 『日本語が亡びるとき』 で一躍“時の人”となった作家・水村美苗、聞き手は翻訳家・鴻巣友季子である。(実は鴻巣…

横溝正史 『本陣殺人事件』

重たい小説を続けて読んだ後、横溝正史のミステリーを読むと、ほっとする。自信に満ちたストーリー展開、安定した文体。非常に安心して読み進めることができるのだ。 先輩格の江戸川乱歩の作品は、どこか危険な領域へ連れて行かれて、戻って来れなくなってし…

浅田次郎 『壬生義士伝』

慶応四年一月。鳥羽・伏見の戦いの大勢は決し、幕軍は潰走を始めていた。そんな中、大坂の盛岡藩蔵屋敷に満身創痍の侍が紛れ込む。かつて盛岡藩を脱藩し、新選組の隊士となった吉村貫一郎であった。保護を求める吉村に対し、蔵屋敷差配役であり吉村の旧友で…