2009-01-01から1年間の記事一覧

クルト・マズア/ベートーヴェン 『交響曲第9番』

N響第九に異変あり!: 英楽館 12月22日、クルト・マズア指揮 NHK交響楽団の第九で、とんだハプニングが起ったらしい。同日の演奏が大晦日にテレビ放映されたので見てみたが、第3楽章の NG 部分はカットされていた。(ちょっと見てみたかったんだけど、仕方…

堀辰雄 『美しい村』

この村はどこへ行つてもいい匂がする 僕の胸に 新鮮な薔薇が挿してあるやうに そのせゐか この村には どこへ行つても犬が居る 堀辰雄 「詩 軽井沢にて」 軽井沢を舞台にした小説 『美しい村』(昭和8年発表) には犬が出てこない。 別荘、療養所、教会、外国…

森田昭子 『島崎こま子おぼえがき』

島崎こま子おぼえがき作者: 森田昭子出版社/メーカー: 文芸社発売日: 2006/03メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログ (1件) を見る 文豪・島崎藤村との愛憎の果てに―― 妻籠の名家・島崎家の最後のお嬢様であるこま子。叔父藤村との愛憎関係ばか…

ジャクリーヌ・デュ・プレのチェロを聴く

ジャクリーヌ・デュ・プレ - Wikipedia ジャクリーヌ・デュ・プレ(1945-1987)は1960〜70年代に活躍した女性チェロ奏者。20代のとき難病を患って演奏活動から引退し、40代で亡くなった人である。 YouTube でいくつか映像を見つけたので、紹介してみようと思…

谷崎潤一郎 『熱風に吹かれて』

「まあ、緩(ゆっ)くり話しましょう」と云って、巻烟草に火を点けた。三千代の顔は返事を延ばされる度に悪くなった。 雨は依然として、長く、密に、物に音を立てて降った。二人は雨の為に、雨の持ち来す音の為に、世間から切り離された。同じ家に住む門野か…

短歌 《入院中の出来事》

sagasou - YouTube YouTube でストーリー風の動画を作るのが流行っているので、ちょっとやってみました。 いつもの俳句だと短すぎるので、旧作の短歌です。

芥川龍之介 『歯車』

……僕はそこを歩いているうちにふと松林を思い出した。のみならず僕の視野のうちに妙なものを見つけ出した。妙なものを?――と云うのは絶えずまわっている半透明の歯車だった。僕はこう云う経験を前にも何度か持ち合わせていた。歯車は次第に数を殖やし、半ば…

年の瀬

年の瀬やタスクばかりが積み上がる 指先が黄色くなるまで冬蜜柑 USTをしてもひとり

空耳メサイア

冒頭のところ、「あんたゴリラ、ゴリラの子〜♪」 と聞こえる。一度そう思うと、どうしても笑ってしまう。これ、父から昔聞いたネタなんだけど、空耳の元祖かもしれない。 ヘンデル:オラトリオ《メサイア》 (英語版)(20世紀の巨匠シリーズ)アーティスト: ヘ…

ショルティ/ベートーヴェン 『交響曲第9番』

コンパクトディスクの開発の歴史について、以下のような逸話が残されている。 コンパクトディスク - Wikipedia 最大収録時間(約74分)が決まったいきさつについて、開発元のソニーによれば以下の通りである。 開発の過程で、カセットテープの対角線と同じで…

降誕祭・その2

幼子が外を見ているイブの夜 友の無事ひたすら祈る聖夜かな 猫の舌舐め跡残る窓結露 田舎より土の香りの葱届く 下仁田の葱ざくざくと刻む朝 主は来ませりマイクで唄う焼芋屋 ストーブの前に並びし子猫かな 枯葉舞い三回転で着地せり 雪国へ牧師夫妻は旅立ちぬ…

きよしこの夜

BLOG STATION RADIO : きよしこの夜 (Podcasting ブログ) 5年前にキーボードで多重録音したものです。 みなさん、よいクリスマスを。

ジャクソン5のクリスマス

上は、珍しくジャーメイン・ジャクソンがリード・ヴォーカルを歌っている "Have Yourself A Merry Little Christmas"。4:10 あたりから "We Wish You A Merry Christmas" に曲が変わるところ、何度聴いてもかっこいい。 こちらは、おなじみ 「ママがサンタに…

クライバー/ブラームス交響曲第4番

カルロス・クライバー - Wikipedia カルロス・クライバー(1930-2004) という指揮者はレコード録音の数が少なく、ブラームスの交響曲は第4番しか録音しなかったらしい。(第2番は DVD 化されていて、YouTube で見ることが出来る。)だが、彼のブラームス第4…

降誕祭

上弦の月輝ける聖夜かな トナカイの橇満載のPS3 聖誕劇練習をする人ありき 人混みを抜け出て見ればオリオン座 パソコンをコタツトップにしたい夜 twitter のハッシュタグ #haiku がほとんど英語圏のみなさんに占領されているようなので、#jhaiku のほうに投…

潤一郎ラビリンス (13)

潤一郎ラビリンス〈13〉官能小説集 (中公文庫)作者: 谷崎潤一郎出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1999/05/18メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見る 中編 『熱風に吹かれて』、『捨てられる迄』、短編 『美男』の3編収録。

芥川龍之介 『蜃気楼』

《僕》 と妻、K君の三人は、鵠沼海岸へ蜃気楼を見に来ている。途中、近くに住んでいるらしいO君も誘い出す。(K君は途中で帰ってしまう。) 僕等は絶え間ない浪の音を後に広い砂浜を引き返すことにした。僕等の足は砂の外にも時々海艸(うみぐさ)を踏ん…

芥川龍之介 『玄鶴山房』

『玄鶴山房』 は昭和2年に発表された短編小説。 一代にして財を築いた堀越玄鶴老人とその妻、一人娘と婿夫婦、幼い孫の武夫、住み込みの女中と看護婦。肺結核のため玄鶴が離れに一人寝ているその家へ、元女中で玄鶴の妾であるお芳が幼子を連れてやってくる。…

バックハウス/ブラームス 『ピアノ協奏曲第2番』

ヴィルヘルム・バックハウス - Wikipedia ある時記者が、バックハウスに余暇の過ごし方や趣味について尋ねた時には、「暇な時はピアノを弾いていますが」と答えたという。 ヴィルヘルム・バックハウス(1884-1969)というピアニストを知ったのは、池田理代子…

芥川龍之介と隅田川

芥川龍之介の初期の小品に 『大川の水』(大正3年発表)というのがある。*1 自分は、大川端(おおかわばた)に近い町に生まれた。家を出て椎の若葉におおわれた、黒塀の多い横網の小路をぬけると、すぐあの幅の広い川筋の見渡される、百本杭(ひゃっぽんぐい…

ヤマサ 「昆布つゆ」 CM

http://www.yamasa.com/cm/details/sub14.html ヤマサ昆布つゆ「はなれられない」篇(15秒) ある秋の日、麻生さん演じる妻はヤマサ「昆布つゆ」CMソングを口ずさみ、何かを思い出しながら料理をしている様子。どうやら、最近吉岡さん演じる夫と二人で立ち…

プレーンオムレツを作ってみた

久しぶりにプレーンオムレツを作ったのだけど、火加減をすっかり忘れてしまっていた。上の動画でフライパンに卵を投入する瞬間、ジューッという音がするくらいが適温なのに、温度が低かったのである。そのため、調理に時間がかかり、仕上がりも恰好悪くなっ…

『濹東綺譚』 読了

『濹東綺譚』 は昭和11年に脱稿し、翌年に発表された小説。主人公の作家 《わたくし》 こと大江匡が、隅田川の東側、玉ノ井という街の私娼窟へ通うという話である。 麻布から玉ノ井まで 《わたくし》 が住んでいるのは 「麻布御箪笥町」 と書かれている。こ…

永井荷風 『濹東綺譚』

濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)作者: 永井荷風出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1991/07/01メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 89回この商品を含むブログ (67件) を見る 本文と後書き含め約180ページの中に、木村荘八の挿絵が40数点収録されている。大人の…

さよならウェンディーズ

「ウェンディーズ」全店、年内で閉店 - ITmedia NEWS 学生の頃、青山通りのウェンディーズによく行った。当時のウェンディーズは、マックよりちょっとリッチな店で、ハンバーガーの具を自分で選んでからオーダーするというのが特色だった。レタス、トマト、…

カラヤンを聴く

あくまでも個人的な好き嫌いのレベルの話なので、ほかにおすすめの CD があったら教えてください。 ブラームス 交響曲1・2番は最強。重低音がすごいなあと思ったら、コントラバスの人数を増やしているらしい。 ハンガリー舞曲は重すぎてバツ。 ベートーベン …

大江健三郎 『不意の唖』

外国兵を乗せたジープが、谷間の村へやって来た。外国兵たちが村の子供等と川で水浴びをしている時、一緒について来た通訳の男の靴が、何者かに盗まれる。靴は川に流されたのではないかと言う者もいたが、周囲を探したところ、草むらの中から鋭利な刃物で切…

大江健三郎 『人間の羊』

冬のはじめ、夜ふけのバスの車内で、酔っ払った外国兵たちが日本人乗客に絡み始める。外国兵はナイフをかざし、後部座席の乗客と運転手の下半身を露出させ、彼らの尻を叩き、笑いながら歌う。 羊撃ち、羊撃ち、パン パン と彼らは熱心にくりかえして訛りのあ…

大江健三郎 『戦いの今日』

《かれ》 と弟の二人は、米軍キャンプの近くで兵士にパンフレットを配っている。その作業は、大学の友達の友達から頼まれたもので、彼らはパンフレットを作った責任者のことを知らなかった。 ……パンフレットは朝鮮戦争に出かけて行く若い知識人の兵隊によび…

大江健三郎 『飼育』

戦争末期、山奥の村に 「敵の飛行機」 が墜落する。飛行機は森の中で炎上したが、落下傘で脱出した一人の黒人兵が捕えられ、村人は彼を地下倉で 「飼う」 ことになる。言葉の通じない黒人兵に対し、最初村人たちは怯えていたが、子供たちを中心に少しずつコ…