2009-10-01から1ヶ月間の記事一覧
島崎藤村と樋口一葉 - 蟹亭奇譚 平田禿木、酔っ払って樋口一葉を訪ねる - 蟹亭奇譚 樋口一葉と『文學界』の男たち - 蟹亭奇譚 馬場孤蝶、戸川秋骨、平田禿木等、同人雑誌 『文學界』 の面々がしばしば樋口一葉の住居を訪ねたことは、再三述べたとおりである…
泉鏡花の怪奇小説の最高峰とされる 『高野聖』(明治33年)を再読。 語り手の 《私》 が旅先で出会った僧侶が語る昔話という体裁の短編小説である。鏡花の小説はとかく観念的とされ、抽象的で曖昧な描写が特徴的なのだけれども、本作の特に前半は、描写が気…
ブログ関係で交流のあったギビさんがお亡くなりになりました。 ギビさんとは、彼女が中学の頃からウェブで知り合い、さまざまなやりとりをしてきました。何度かお会いしたこともあるのですが、明るい笑顔が忘れられません。 ギビさんは多くの詩や小説を書い…
童謡 「赤い靴」 に関する事柄を調べていたら、興味深い記事を発見した。 麻布学(4)鳥居坂教会のルーツ - おおた 葉一郎のしょーと・しょーと・えっせい 僕の手元に大濱徹也著 『鳥居坂教会百年史』(1987年刊) があるので、参考にしながらいくつかの事…
明治22年、馬場孤蝶は明治学院の二年級に編入し、島崎藤村と同級となる。少年時代の藤村は才気煥発、天秤棒(出っ張っているという意味)と綽名のつくくらい積極的な性格だったらしいのだが、この頃になると意気消沈し、学校も休みがちであったという。 ……と…
ロキソニン60ミリの夜長かな 秋雨や暗き小部屋でモンク聴くソロ・モンク+9アーティスト: セロニアス・モンク出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル発売日: 2003/12/17メディア: CD購入: 3人 クリック: 16回この商品を含むブログ …
馬場孤蝶 『明治文壇の人々』 から。 明治29年、樋口一葉は本郷区丸山福山町で没した。その後、全くの偶然なのだが、この家に森田草平(1881-1949)が住んだため、馬場、森田らが中心となり 、明治36年に 「一葉会」 を催している。また、明治40年、馬場はこ…
秋雨やロングブーツのひと多き テアトルの絨毯に沁む秋時雨 温かきお茶を片手にロードショー 雨上がり靖国通りの銀杏散る
馬場孤蝶 『明治文壇の人々』(ウェッジ文庫) には、明治期に活躍した多くの作家、文学者と著者との出会いの模様が記されている。 まずは尾崎紅葉(1868-1903)との出会い。以下の引用部分に 「明治二十四年」 とあるが、当時馬場は数え二十三歳、明治学院…
http://www.pandoranohako.com/ 公開中の映画 『パンドラの匣』 を観た。 元々かなり非現実的な話なのだけど、わりとそのまんま非現実的に作っていて、ふんわりと楽しい気分になる映画だった。川上未映子の存在感はすごいや。 原作とは登場人物の設定がちょ…
京都書房の『新修国語総覧』1978年の版の、亀井勝一郎を紹介するページで、『島崎藤村』について、「私生活まで意味ありげに詮索するのは邪道だろう」とあるのを、平野謙の『島崎藤村』の批判であり、平野が反論し、荒正人が平野を援護した、と書いてある。 …
最近買った iPod nano にプログレッシヴ・ロックを何十枚か入れて聴いている。プログレを最初に聴いたのは中学生の頃。プログレが一番流行っていたときに、ほぼリアルタイムで聴いたのだが、その後何度か長いブランクがあった。2度目に熱中したのは CD が普…
本書は昭和28年に書き下ろし出版された文学評論である。 「島崎藤村論」は作品論である。詩、小説、感想、紀行、童話をふくめて、それに卽しながら作家としての獨自性と運命を探らうとしたものである。彼の生涯あるひは私生活には直接ふれなかつた。自傳的作…
後半、全身の骨が溶けだしてしまう 《溶骨症》 に冒された十三歳の少女が登場する。彼女は病院の警備主任の娘であり、副院長の慰みものにされている。警備主任は副院長の手下らしき男たちに殺され、インポテンツの副院長は死体の下半身を自身の体に接合して…
結婚式 - はてな匿名ダイアリー 増田氏の挙げようとしている結婚式がキリスト教式であるとするならば、まずは聖書を読んでみてはいかがだろうか。 イエスに触れていただくために、人々が子供たちを連れて来た。弟子たちはこの人々を叱った。しかし、イエスは…
本ブログでさんざん取り上げてきた馬場孤蝶(1869-1940)の著書、『明治文壇の人々』 が文庫本で復刊されたので、早速購入した。 本書は昭和十七年、三田文学出版部から発刊された。明治の文壇とその雰囲気を回顧した文章や講演筆記をまとめたもので、三、四…
関東ローカルなのかもしれないが、「富士サファリパークの CM ソングを歌っているのは和田アキ子ではないか?」という噂が昔からある。 もちろん、この曲を歌っているのは串田アキラ。『戦闘メカ ザブングル』、『キン肉マン』 など特撮・アニメ主題歌で有名…
「形容詞 + です」 は誤用ではない 変な日本語(1) 「危ないですから」-九十九式 電車に乗っていると、ホームでこんなアナウンスがよく流れてくる。「3番線に電車がまいります。危ないですから、黄色い線の内側にお下がりください」僕はこれを聞くたびに、強…
店先の林檎の山をしばし嗅ぐ 通院の今日の褒美は芋羊羹 庭先の白粉花に集う子ら 落花生剥きつつピアノ協奏曲
公開中の映画、『ヴィヨンの妻〜桜桃とタンポポ〜』 を観た。 太宰治の短編小説 『ヴィヨンの妻』 が下敷きになっているが、ほかにも 『思い出』、『燈籠』、『姥捨』、『桜桃』 など様々の太宰作品から引用されている。 原作 『ヴィヨンの妻』 は、小説家の…
副院長の秘書という女性が登場する。《男》 の敵なのか味方なのか、よくわからない謎の女である。 《男》 は自宅に帰っているかもしれない妻に電話をかける。 ベルは鳴りつづけた。 「駄目みたいね。」 「ためしに家に掛けてみているんだよ。」 女秘書が肘掛…
朝寒や蒲団の中に猫二匹
連れ去られた妻を追って病院に潜入した 《男》 は、当直医が怪しいとの情報を守衛から聞き出した。 当直医は男に目もくれなかった。喫煙所を左に折れて、緑色の標識の方へ向う。守衛が立去ったのと同じ方角だ。厚いレンズの後ろで薄眼を宙に据えたまま、姿勢…
僕の足を上から押さえつけるように、ミイが乗っかって舐めている。ちょっとくすぐったいのだけど、だんだん温かくなってくる。 眠れぬ夜を過ごした僕は、そのまま深い眠りに落ちてしまった。
古ビルの跡地に咲きし桔梗かな 休日に隠元を売る翁あり 金木犀猫と語りて三十分 秋高し猫と眺むる窓の外 みそラーメン玉子二つの秋の夜
朝寒し関節の鳴る蒲団かな レントゲン室に置かれし檸檬かな 秋の蚊と思へばかゆし注射針 秋風や足に食ひ込む補装靴 立冬まで加療要すと診断書 荒治療耐へし褒美のチロルチョコ 病院の通ひ路遠し秋の暮
島崎藤村の自伝的小説の主人公が、自分の 《手のひらをながめる》 という行動について、先日、以下のように書いた。 どちらも共通して、亡き父――暗い淫蕩の血が流れ、狂死した父――を思い起こすきっかけとして描かれる行動なのだろうと思う。 手のひらをなが…
救急車に連れ去られた妻を追う 《男》。だが、彼が行う会話は全て盗聴器でカセット・テープに録音されている。 (以下の会話は一本目のテープの裏面からの抜粋である。再生機カウンター目盛の表示は729。時刻は事件発生当日の午後一時二十分頃。場所は男…
感想記事を読みなおしてみると、部分ごとに見事に感想がばらばらである。無理やりまとめると、不安定な主人公、不安定な文章、不安定な作者を表した小説ということになるだろうか。 読んでいるときは結構面白いと思ったのだけれど、読み終わって妙なもやもや…
密会 (新潮文庫)作者: 安部公房出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1983/05メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 48回この商品を含むブログ (44件) を見る 主人公の 《男》 は運動具店に勤務し、《ジャンプ・シューズ》 の販売促進係長である。 ジャンプ・シュー…