2009-10-01から1ヶ月間の記事一覧

平野謙 『島崎藤村』

島崎藤村 (岩波現代文庫)作者: 平野謙出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2001/11/16メディア: 文庫 クリック: 8回この商品を含むブログ (6件) を見る 平野謙(1907-1978)というと、《新潮文庫の島崎藤村の巻末解説を書いた人》 くらいにしか思っていなかっ…

神無月

新旧とりまぜて。 芋田楽会話も止まる夕餉かな どんぐりを握る子の手の温かさ コスモスの小路を帰る母子かな Windows update の秋夜長 秋深しスパムメールが三百通 竹垣の上で蜻蛉のタッチアンドゴー ボサノヴァを繰り返し聴く夜長かな ビデオ見る妻の後ろで…

島崎藤村 『家』 感想まとめ

藤村の長編小説の中では、個人的に 『家』 が一番好きである。感想記事を読みなおしてみると、女性の登場人物に魅力を感じていることがはっきりする。(男はほとんどダメ人間ばかりなのだ。) 島崎藤村 『家 (上巻)』 - 蟹亭奇譚 家族の写真 - 蟹亭奇譚 三…

島崎藤村 『夜明け前』 感想まとめ

最近読んだ小説の中で最大の収穫が 『夜明け前』 であった。 読みながら途中の感想をブログに都度記していくという方法をとってみたのも、この小説が初めてだったのだけれど、小説未読の閲覧者にどれだけ伝えることができたか、心もとない限りではある。(☆…

ブラームス:弦楽六重奏曲第1番変ロ長調

長調と短調の違いは何か?――と聞かれて、「長調は明るく、短調は暗い」 と答えて良いのは小学生までである。 ブラームスの弦楽六重奏曲第1番は変ロ長調というキーで作曲されているが、明るさと暗さの両面を持っている。常にその両側を行ったり来たりし、また…

潤一郎ラビリンス (10)

潤一郎ラビリンス〈10〉分身物語 (中公文庫)作者: 谷崎潤一郎,千葉俊二出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1999/02/18メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (5件) を見る 『金と銀』、『AとBの話』、『友田と松永の話』 の3編収録。 いず…

島崎藤村 『新生』 を巡る批評と個人的な感想

芥川龍之介の遺作、『或る阿呆の一生』(昭和2年)に以下の一節がある。 殊に「新生」に至っては、――彼は「新生」の主人公ほど老獪な偽善者に出会ったことはなかった。 芥川龍之介 『或る阿呆の一生』 四十六 嘘 同年、島崎藤村は芥川の追悼文を著し、上の箇…

別れ

捨吉は一連の出来事を小説に書いて発表する。自らの所業や立場を隠し、世間に嘘をつき続けることを潔しとせず、《告白》 を選ぶという生き方は、『破戒』 の主人公瀬川丑松と全く同じである。 捨吉が書いた 《小説》 は新聞に連載されたのだから、社会的にも…

節子の手紙

次兄義雄家族は谷中へ転居し、捨吉は高輪に戻るが、その後、愛宕下に住居を移している。そのころ、節子は週末ごとに叔父の家に通う日々であった。 「先日お話のあったことを書いてお目にかけます。いちばん最初わたしの上がったころの叔父さんはほんとにこわ…

第5世代 iPod nano

数年間使っていた iPod shuffle が完全に壊れてしまったので、最新の iPod nano を購入した。以下、使用感など。 shuffle と nano の一番の違いは、やはりディスプレイだった。CD のカバーアートが表示されるのって、意外と重要かもしれない。 shuffle に比…

節子

総勢9人の高輪の住まいが手狭なため、岸本は近くに部屋を借り、日中はそこで仕事をしている。彼は節子に口述筆記などの手伝いや家事をさせ、わずかながら給金を払うようになった。節子の日常にも張りができ、家にお金を入れるようになったので、肩身の狭かっ…

墓参り

岸本がフランスに行っている間、節子は出産以外に、乳房の手術(乳腺炎?)、手の病気(「両手にひろがった水虫のようなもの」と書かれている)を患い、相当具合が悪くなっていた。 岸本帰国後の8月、彼は亡き妻の墓参りのため、大久保へ赴く。連れは二人の…

島崎藤村 『新生 後編』

新生 (後編) (岩波文庫)作者: 島崎藤村出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1970/07/16メディア: 文庫この商品を含むブログ (1件) を見る 島崎藤村 『家 (下巻)』 - 蟹亭奇譚 に書いた年譜の続き。*1 大正2年(1913) 3月、浅草新片町より芝二本榎へ転居。 4…

泉鏡花 『森の紫陽花』

千駄木の森の夏ぞ晝(ひる)も暗き。此處の森敢(あへ)て深しといふにはあらねど、おしまはし、周圍を樹林にて取卷きたれば、不動坂、團子坂、巣鴨などに縱横に通ずる蜘蛛手の路は、恰(あたか)も黄昏に樹深き山路を辿るが如し。 (中略) 玉簾(たますだ…