読書中

フローベール 『紋切型辞典』

なにげにフローベール再読中。『三つの物語』と『紋切型辞典』 - がらくた銀河 フランス文学なんてちっとも読んだことがないのだけど、florentine さんのおすすめ、『紋切型辞典』 を書店で見かけたので最初のページを開いてみた。 アイスクリーム [glace] …

潤一郎ラビリンス (15)

潤一郎ラビリンス〈15〉横浜ストーリー (中公文庫)作者: 谷崎潤一郎,千葉俊二出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1999/07/18メディア: 文庫この商品を含むブログ (4件) を見る 長編 『肉塊』、随筆 『港の人々』 収録。

Philip Marlowe

「なんて名前?」 「マーロウ」 「e がつくの、つかないの?」 「つくよ」 「そうなの? 悲しそうな、きれいな名前だわ」 レイモンド・チャンドラー 『長いお別れ』 24 「……アンという名を呼ぶんでしたら、e のついたつづりのアンで呼んでください」 「字な…

チャンドラー 『長いお別れ』

長いお別れ (ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 7-1))作者: レイモンド・チャンドラー,清水俊二出版社/メーカー: 早川書房発売日: 1976/04/01メディア: 文庫購入: 11人 クリック: 89回この商品を含むブログ (231件) を見る 二十何年ぶりに再読。 レイモンド・チャ…

ル=グウィン 『ゲド戦記5 ドラゴンフライ アースシーの五つの物語』

ドラゴンフライ アースシーの五つの物語―ゲド戦記〈5〉 (岩波少年文庫)作者: アーシュラ・K.ル=グウィン,ディビッド・ワイヤット,Ursula K. Le Guin,清水真砂子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/03/17メディア: 単行本 クリック: 5回この商品を含むブ…

潤一郎ラビリンス (14)

潤一郎ラビリンス〈14〉女人幻想 (中公文庫)作者: 谷崎潤一郎,千葉俊二出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1999/06/18メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (4件) を見る 短編 『創造』、『亡友』、長編 『女人神聖』 収録。

潤一郎ラビリンス (13)

潤一郎ラビリンス〈13〉官能小説集 (中公文庫)作者: 谷崎潤一郎出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1999/05/18メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (3件) を見る 中編 『熱風に吹かれて』、『捨てられる迄』、短編 『美男』の3編収録。

永井荷風 『濹東綺譚』

濹東(ぼくとう)綺譚 (岩波文庫)作者: 永井荷風出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1991/07/01メディア: 文庫購入: 5人 クリック: 89回この商品を含むブログ (67件) を見る 本文と後書き含め約180ページの中に、木村荘八の挿絵が40数点収録されている。大人の…

ル=グウィン 『ゲド戦記2 こわれた腕輪』

再読。昔読んだときの印象は、ゲドが登場する後半は面白いのだけど、そこまでがひたすら長くて退屈だった。でも、この第2巻が一番好きという人も結構いるようだ(女性ファンが多いのかな)。 こわれた腕環―ゲド戦記〈2〉 (岩波少年文庫)作者: アーシュラ・K.…

泉鏡花 『草迷宮』

草迷宮 (岩波文庫)作者: 泉鏡花出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 1985/08/16メディア: 文庫購入: 7人 クリック: 44回この商品を含むブログ (28件) を見る 最高傑作だという人が多いのだが、初っ端から読みにくくて難儀。ゆっくり読むことにしよう。 続きは…

潤一郎ラビリンス (12)

潤一郎ラビリンス〈12〉神と人との間 (中公文庫)作者: 谷崎潤一郎出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1999/04/18メディア: 文庫購入: 1人 クリック: 2回この商品を含むブログ (8件) を見る 長編 『神と人の間』、短編 『既婚者と離婚者』、『鶴唳(かくれ…

村上春樹 『パン屋再襲撃』

「もう一度パン屋を襲うのよ。それも今すぐにね」と彼女は断言した。「それ以外にこの呪いをとく方法はないわ」 村上春樹 『パン屋再襲撃』 短編集 『パン屋再襲撃』 を再読。 表題作は 『パン』(原題 『パン屋襲撃』。『夢で会いましょう』(講談社文庫)…

横光利一 『上海』

横光利一の長編小説 『上海』 は昭和3〜6年に雑誌 『改造』 に掲載され、手を加えられて昭和7年に単行本として刊行された。その後、さらに作者が手を加えて昭和10年に 「決定版」 と銘打って再刊されている。現在、講談社文芸文庫と岩波文庫から出版されてい…

スーパー・ヒーロー

ヘンリーは前線に復帰する。だが、戦況は悪化し、兵士たちは疲弊していた。そして、ついに退却命令が下る。ヘンリーは部下とともに退却を開始する。しかし、地元の農民も同時に避難を始めたから道路は大混雑。混乱の中、彼は車両を捨て、部下を失う。さらに…

ヒーロー

1917年夏、ヘンリーは松葉杖を使わずに歩けるまで回復した。単独で外出できるようになった代りに、付き添いと称してキャサリンとデートすることは許されなくなったというシチュエーションである。彼はミラノのバーで数人の知人と会う。その中に、エットーレ…

セカンド・オピニオン

前線で負傷したヘンリーは、ミラノのアメリカ兵専用病院へ転院する。そこへなぜか、以前の任地で知り合った恋人の 《看護師*1》 キャサリン・バークリーが転任してくる。ヘンリー君、もうやりたい放題である。 ヘンリーの膝には被弾した際の破片が残っている…

迫撃砲

1917年、アメリカ人の主人公 《ぼく》 ことフレドリック・ヘンリー中尉は、赤十字義勇兵としてイタリア軍に加わっていた*1。彼の任務は前線で負傷した兵士を搬送車両に乗せ、後方まで送り届けることである。作戦の場所はオーストリア国境付近の山岳地帯。夜…

ヘミングウェイ 『武器よさらば』

『武器よさらば』 は1929年に発表された長編小説。 ヘミングウェイの長編は初挑戦。短編はいくつか読んだことがあるのだが、かなり技巧的な小説を書くひとだと思った。長編はいかがなものか。 50ページくらい読んだのだけど、事件らしい事件が起こらない。文…

潤一郎ラビリンス (11)

潤一郎ラビリンス〈11〉銀幕の彼方 (中公文庫)作者: 谷崎潤一郎,千葉俊二出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1999/03/18メディア: 文庫 クリック: 1回この商品を含むブログ (7件) を見る 短編小説 『人面疽』、『アヹ・マリア』、『青塚氏の話』、『過酸…

馬場孤蝶、島崎藤村と喧嘩する

明治22年、馬場孤蝶は明治学院の二年級に編入し、島崎藤村と同級となる。少年時代の藤村は才気煥発、天秤棒(出っ張っているという意味)と綽名のつくくらい積極的な性格だったらしいのだが、この頃になると意気消沈し、学校も休みがちであったという。 ……と…

森田草平、夏目漱石に叱られる

馬場孤蝶 『明治文壇の人々』 から。 明治29年、樋口一葉は本郷区丸山福山町で没した。その後、全くの偶然なのだが、この家に森田草平(1881-1949)が住んだため、馬場、森田らが中心となり 、明治36年に 「一葉会」 を催している。また、明治40年、馬場はこ…

馬場孤蝶、尾崎紅葉に出会う

馬場孤蝶 『明治文壇の人々』(ウェッジ文庫) には、明治期に活躍した多くの作家、文学者と著者との出会いの模様が記されている。 まずは尾崎紅葉(1868-1903)との出会い。以下の引用部分に 「明治二十四年」 とあるが、当時馬場は数え二十三歳、明治学院…

馬場孤蝶 『明治文壇の人々』

本ブログでさんざん取り上げてきた馬場孤蝶(1869-1940)の著書、『明治文壇の人々』 が文庫本で復刊されたので、早速購入した。 本書は昭和十七年、三田文学出版部から発刊された。明治の文壇とその雰囲気を回顧した文章や講演筆記をまとめたもので、三、四…

エレベーター

副院長の秘書という女性が登場する。《男》 の敵なのか味方なのか、よくわからない謎の女である。 《男》 は自宅に帰っているかもしれない妻に電話をかける。 ベルは鳴りつづけた。 「駄目みたいね。」 「ためしに家に掛けてみているんだよ。」 女秘書が肘掛…

尾行

連れ去られた妻を追って病院に潜入した 《男》 は、当直医が怪しいとの情報を守衛から聞き出した。 当直医は男に目もくれなかった。喫煙所を左に折れて、緑色の標識の方へ向う。守衛が立去ったのと同じ方角だ。厚いレンズの後ろで薄眼を宙に据えたまま、姿勢…

盗聴

救急車に連れ去られた妻を追う 《男》。だが、彼が行う会話は全て盗聴器でカセット・テープに録音されている。 (以下の会話は一本目のテープの裏面からの抜粋である。再生機カウンター目盛の表示は729。時刻は事件発生当日の午後一時二十分頃。場所は男…

安部公房 『密会』

密会 (新潮文庫)作者: 安部公房出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1983/05メディア: 文庫購入: 6人 クリック: 48回この商品を含むブログ (44件) を見る 主人公の 《男》 は運動具店に勤務し、《ジャンプ・シューズ》 の販売促進係長である。 ジャンプ・シュー…

潤一郎ラビリンス (10)

潤一郎ラビリンス〈10〉分身物語 (中公文庫)作者: 谷崎潤一郎,千葉俊二出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1999/02/18メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (5件) を見る 『金と銀』、『AとBの話』、『友田と松永の話』 の3編収録。 いず…

別れ

捨吉は一連の出来事を小説に書いて発表する。自らの所業や立場を隠し、世間に嘘をつき続けることを潔しとせず、《告白》 を選ぶという生き方は、『破戒』 の主人公瀬川丑松と全く同じである。 捨吉が書いた 《小説》 は新聞に連載されたのだから、社会的にも…

節子の手紙

次兄義雄家族は谷中へ転居し、捨吉は高輪に戻るが、その後、愛宕下に住居を移している。そのころ、節子は週末ごとに叔父の家に通う日々であった。 「先日お話のあったことを書いてお目にかけます。いちばん最初わたしの上がったころの叔父さんはほんとにこわ…