神無月

 新旧とりまぜて。


芋田楽会話も止まる夕餉かな
どんぐりを握る子の手の温かさ
コスモスの小路を帰る母子かな
Windows update の秋夜長
秋深しスパムメールが三百通
竹垣の上で蜻蛉のタッチアンドゴー
ボサノヴァを繰り返し聴く夜長かな
ビデオ見る妻の後ろで梨を剥く
君去りて幾度目の朝菊咲きぬ
汝が文に挟まれてをり色紅葉
子らの手にみどりの茎の曼珠沙華
鉄塔の先に聳ゆる秋の空
病棟の窓を見下ろす銀杏かな
上掛けを一つ重ねる秋の夜
新米を開くと母より文ありき
秋の朝ホームに並ぶ黒タイツ
秋雲を撮る人多し跨線橋
トラックの音のみ聞こゆ雨の月
朝寒や毛布被りて寝返りす
木犀の香りの場所で待ち合わせ
肌寒し予防接種の母子かな
秋色のフリースを着る二人かな
黒雲の如く椋鳥飛び立ちぬ
秋の陽や黄金に染まる首都高速
コスモスを分けては走る世田谷線


合本俳句歳時記 第四版

合本俳句歳時記 第四版