村上春樹 『神の子どもたちはみな踊る』
「三宅さんってさ、ひょっとしてどこかに奥さんがいるんじゃないの?」
(中略)
「子どももいるの?」
「ああ。いる。二人もいる」
「神戸にいるんだね」
「あそこに家があるからな。たぶんまだそこに住んどるやろな」
「神戸のなんていうところ?」
「東灘区」
三宅さんは目を細め、顔をあげて暗い海の方を見て、それからまた火に視線を戻した。
村上春樹 『アイロンのある風景』
1999年、雑誌 『新潮』 に 『地震のあとで』 という題名で連載された連作短編集。各作品はいずれも 1995年1月に起きた阪神大震災の後の出来事という共通点を持っている。
今までに読んだ村上春樹の小説は、どこか知らない場所で起こるよくわからないような話(でも、なんとなく読んでしまう)が多かった気がするのだが、特定の時代と場所(神戸とは無関係な地名であっても)が書かれるだけで、現実味を帯びてくる。
あの時、あなたはどこで何をし、何を考えていたのですか?――そんな風に問いかけられているような気がする。
- 作者: 村上春樹
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/02/28
- メディア: 文庫
- 購入: 22人 クリック: 427回
- この商品を含むブログ (355件) を見る