海外文学

アメリカの警官とドーナツの関係

アメリカ合衆国の警官がドーナツを食べている場面というのは、一種のステレオタイプである。だが、その起源や由来については定かではない。 なぜ?アメリカの警官が、いつもドーナツを食べている理由 - NAVER まとめ はてなブックマーク - なぜ?アメリカの…

レイモンド・チャンドラー 『高い窓』

1942年に発表された私立探偵フィリップ・マーロウもの長編第3作。清水俊二訳だが、翻訳完成前に訳者が死去したため、戸田奈津子が完成させたという本である。 ハードボイルド小説といえば、派手なアクションとタフな主人公と相場が決まっているのだけれど、…

トーベ・ヤンソン読書会

そして日曜日は『杉江松恋の、読んでから来い!』第3回。課題本はトーベ・ヤンソン短篇集『黒と白』です。いつもより早めの17時スタート。レジュメ当日持込の方は20部ほどコピーの上16時半くらいにはご来店ください。見学のみの参加も大歓迎です!#荻窪読書…

ダシール・ハメット 『マルタの鷹』読書会

書籍在庫検索アプリ「Takestock」を使ってみた - 蟹亭奇譚 の続き。そして次回『杉江松恋の、読んでから来い!』第二回は、12/4!課題本は“『マルタの鷹』改訳決定版”に決定! 今日涙を飲んで参加できなかった方も次回はぜひ。しかも早くも、ちょっとサプラ…

サン=テグジュペリ 『星の王子さま』(河野万里子訳)

サン=テグジュペリ 『星の王子さま』(内藤濯訳) - 蟹亭奇譚 サン=テグジュペリ 『星の王子さま』(池澤夏樹訳) - 蟹亭奇譚 に続いて、3冊目。星の王子さま (新潮文庫)作者: サン=テグジュペリ,Antoine de Saint‐Exup´ery,河野万里子出版社/メーカー: 新…

サン=テグジュペリ 『星の王子さま』(池澤夏樹訳)

星の王子さま (集英社文庫)作者: Antoine de Saint Exup´ery,アントワーヌ・ドサン=テグジュペリ,池澤夏樹出版社/メーカー: 集英社発売日: 2005/08/26メディア: 文庫購入: 4人 クリック: 43回この商品を含むブログ (190件) を見る 2冊目の 『星の王子さま』 …

サン=テグジュペリ 『星の王子さま』(内藤濯訳)

十数種類の翻訳が出版されているという 『星の王子さま』 を3種類続けて読んだので、簡単に比較してみることにする。なお、僕はフランス語を解さないので、どの訳が正しいかは問わないことにする。星の王子さま―オリジナル版作者: サン=テグジュペリ,Antoine…

『人間の土地』 に登場する飛行機

『夜間飛行』に登場する飛行機 - 蟹亭奇譚の続き。 一九三五年 (中略) パリ=サイゴン間の飛行記録を更新するためル・ブールジェ飛行場を出発するものの、リビア砂漠に不時着する。ベドウィンの遊牧民に救われて奇蹟的に生還。 『人間の土地』(新潮文庫) …

サン=テグジュペリ 『人間の土地』

1920年代のモーリタニア(当時はフランス領西アフリカだった)。首都ヌアクショット付近の屯所に、サン=テグジュペリらが不時着したときの話。 小説 『南方郵便機』 に書かれている老軍曹のエピソードについて、「あの夜のこともまた実話だ」 と作者は述べ…

「大切なことは目に見えない」

イエスが十字架にかけられ、その後復活したときの話。 十二人の一人でディディモと呼ばれるトマスは、イエスが来られたとき、彼らと一緒にいなかった。 そこで、ほかの弟子たちが、「わたしたちは主を見た」と言うと、トマスは言った。「あの方の手に釘の跡…

フローベール 『紋切型辞典』

なにげにフローベール再読中。『三つの物語』と『紋切型辞典』 - がらくた銀河 フランス文学なんてちっとも読んだことがないのだけど、florentine さんのおすすめ、『紋切型辞典』 を書店で見かけたので最初のページを開いてみた。 アイスクリーム [glace] …

『夜間飛行』に登場する飛行機

夜間飛行 (新潮文庫)作者: サン=テグジュペリ,堀口大學出版社/メーカー: 新潮社発売日: 1956/02/22メディア: 文庫購入: 8人 クリック: 75回この商品を含むブログ (209件) を見る 1993年改版以降、『夜間飛行』(新潮文庫)のカバーには宮崎駿のイラストが用…

サン=テグジュペリ 『南方郵便機』

1920年代のアフリカ北西部、カサブランカとダカールの中間あたり。郵便飛行機の操縦士ジャック・ベルニスは、機体のトラブルによりサハラのフランス軍小屯所に不時着する。彼を迎えるのは一人の老軍曹。ここには半年に一度しか郵便が届かないのだと軍曹は語…

サン=テグジュペリ 『夜間飛行』

妻は夫を眺めた。自分の手で、夫の武装を隙なく仕上げる。万全に整った。 「すごくきれい」 そして彼女は気づいた。夫の髪がていねいに整えられている。 「それ、星に見てもらうため?」 「老けた気分にならないため」 「嫉妬するなあ……」 サン=テグジュペ…

マロイへの伝言

フィリップ・マーロウは命がけで賭博船に乗り込み、《大鹿マロイ》 への伝言を届けてくれと、暗黒街のボス、ブルネットに依頼する。 ※強調部は引用者による。 「どんな伝言だ?」 私はデスクの上の紙入れから名刺を一枚とり出して、その裏に鉛筆で文字を五つ…

おい、ヘミングウェイ。

フィリップ・マーロウと大男(警官)との会話。インディアンというのはある男に雇われている用心棒のことである。 「どうして、ピストルが要るんだね?」 「インディアンを殺すんだ」 「そうか。インディアンを殺すのか」 彼はまた、口髭の男を見て、いった…

チャンドラー 『さらば愛しき女よ』

私立探偵フィリップ・マーロウが登場する小説は、実はソフトボイルドである。 ※強調部は引用者による。 I had had two cups of black coffee, then I had had a drink, then I had had two soft-boiled eggs and a slice of toast broken into them, then so…

ル=グウィン 『ゲド戦記6 アースシーの風』

アースシーの風―ゲド戦記〈6〉 (岩波少年文庫)作者: アーシュラ・K.ル=グウィン,ディビッド・ワイヤット,Ursula K. Le Guin,清水真砂子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/03/17メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (6件) を見る 原著の…

ウルフ 『オーランドー』

という次第で、今や部屋に残るは眠れるオーランドーと喇叭(ラッパ)手と伝記作家及び読者のみ。そして喇叭手たちはきちんと整列してひと吹き凄まじく 「〈真実〉だ!」と吹き鳴らした、 と、オーランドーは目覚めた。彼は伸びをした。立ち上った。われわれ…

『日々の泡』とビリー・ストレイホーン

「忙しいかね」コランは訊いた。 「いいえ。お料理はもう出来上がるところで」 「それなら、リヴィング・ルームに来てビグルモワの基本を教えてくださらないかな。ぼくがレコードをかけるから」 「デューク・エリントン編曲の『クロエ』とか『ジョニー・ホッ…

オーウェル 『カタロニア讃歌』

『カタロニア讃歌』 はイギリス人ジョージ・オーウェル(1903-1950)が、1936〜1937年にスペイン市民戦争に民兵として参加した際のことを書き、1938年に発表したルポルタージュ(ノンフィクション)。著者の生前にはほとんど売れず、注目を集めたのは1980年…

Philip Marlowe

「なんて名前?」 「マーロウ」 「e がつくの、つかないの?」 「つくよ」 「そうなの? 悲しそうな、きれいな名前だわ」 レイモンド・チャンドラー 『長いお別れ』 24 「……アンという名を呼ぶんでしたら、e のついたつづりのアンで呼んでください」 「字な…

ル=グウィン 『ドラゴンフライ』

『ドラゴンフライ』 は1997年に発表された130ページほどの短編小説。アンソロジー 『伝説は永遠に』(ハヤカワ文庫 asin:4150202826)に収録されたことがある。旧邦題は 『トンボ』。 時代は4の数年後。ハブナーの東にあるウェイ島に生まれ育った少女ドラゴ…

ル=グウィン 『湿原で』

2001年発表の書き下ろし短編。2と3の中間くらいの時代の話で、ハブナーの北西にあるセメルという島を舞台にしている。 長い旅を終えた主人公イリオスは、湿原の中の村にたどり着く。その村では牛の伝染病が流行っていて、彼はその治療師として活躍する。だ…

ル=グウィン 『地の骨』

2001年発表の書き下ろし短編。ゴント島が舞台になっていて、ゲドの師匠オジオンの若い頃の話。 若きオジオンとその師匠ダルスが力を合わせて地震を静めるというストーリーなのだが、地震の場面の描写が中途半端でよくわからない。また、地震の後の復旧作業が…

ル=グウィン 『ダークローズとダイヤモンド』

『ダークローズとダイヤモンド』 は1999年に発表された短編小説。魔女の娘ダークローズと商人の息子ダイヤモンドのラヴ・ストーリー。 恋愛小説に双方の親が深く関わってくるというのは、近年のアメリカの小説には珍しいかもしれない。 親子の葛藤みたいな部…

ル=グウィン 『カワウソ』

『カワウソ』 は 『ゲド戦記』5(2001年) に収録された書き下ろし中編小説。本文180ページ以上あって、5の中では最も長い。 原題は "The Finder"。《物さがしの術使い》 という意味。 《カワウソ》 は主人公メドラのニックネームなのだけど、この邦題はあ…

ヘミングウェイ 『日はまた昇る』

『日はまた昇る』("The Sun Also Rises") は1926年に発表された、アーネスト・ヘミングウェイ(1899-1961)の最初の長編小説。 簡潔な文体は初期の頃からヘミングウェイの特徴だったようだが、本作はかなりくどい部分が多く、ストーリー的には退屈な小説で…

ドストエフスキー 『白夜』

「……ねえ、いいこと、あなたのお話はとてもすてきですわ。でもなんとかそんなに言葉を飾らずにお話ししてくださるわけにいきませんかしら? でないと、あなたのお話はまるで本でも読んでいらっしゃるみたいなんですもの」 ドストエフスキー 『白夜』 第二夜 …

スタインベック 『気まぐれバス』

フアンは、かっとなった。「いいかね」と、彼はいった。「バスをうごかすのは私なんだ。この仕事は、もうだいぶ永いことやっている。わかるかね? あんたは黙って乗って、私にまかせるか、それがいやならよしてもらいましょう。とにかく、車は私がうごかすん…