2010-01-01から1年間の記事一覧

マロイへの伝言

フィリップ・マーロウは命がけで賭博船に乗り込み、《大鹿マロイ》 への伝言を届けてくれと、暗黒街のボス、ブルネットに依頼する。 ※強調部は引用者による。 「どんな伝言だ?」 私はデスクの上の紙入れから名刺を一枚とり出して、その裏に鉛筆で文字を五つ…

おい、ヘミングウェイ。

フィリップ・マーロウと大男(警官)との会話。インディアンというのはある男に雇われている用心棒のことである。 「どうして、ピストルが要るんだね?」 「インディアンを殺すんだ」 「そうか。インディアンを殺すのか」 彼はまた、口髭の男を見て、いった…

チャンドラー 『さらば愛しき女よ』

私立探偵フィリップ・マーロウが登場する小説は、実はソフトボイルドである。 ※強調部は引用者による。 I had had two cups of black coffee, then I had had a drink, then I had had two soft-boiled eggs and a slice of toast broken into them, then so…

筒井康隆 『現代語裏辞典』

あいさい【愛妻】 妻のほうは何とも思っていない。その証拠に「愛夫」ということばはない。 エスエフ【SF】 SFマンガ、SFアニメが生れる以前のSF小説のこと。 びよう【美容】 美人には不要。醜女には無用。 筒井康隆の新刊 『現代語裏辞典』 は上の…

島崎藤村 『生い立ちの記』

『生い立ちの記』 は明治45年に発表された短編小説。*1 「或る婦人に與ふる手紙」 と副題がつけられているとおり、一人の女性に宛てた書簡形式になっており、内容は語り手の 《私》 (もちろん作者自身がモデル) の近況と自身の生い立ちが交互に綴られてい…

島崎藤村 『芽生』

『芽生』 は明治42年に発表された短編小説。*1 執筆時期は、明治43〜44年に発表された長編 『家(上・下)』 の直前にあたり、内容も 『家』 と重複する部分の多い作者の自伝的小説である。 島崎藤村 『家 (下巻)』 - 蟹亭奇譚 作中に描かれる年代は明治37…

ル=グウィン 『ゲド戦記6 アースシーの風』

アースシーの風―ゲド戦記〈6〉 (岩波少年文庫)作者: アーシュラ・K.ル=グウィン,ディビッド・ワイヤット,Ursula K. Le Guin,清水真砂子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2009/03/17メディア: 単行本 クリック: 3回この商品を含むブログ (6件) を見る 原著の…

有島武郎 『カインの末裔』

『カインの末裔』 は大正6年に発表された短編小説。 貧しい小作農の仁衛門(にんえもん)は自分の飼っている馬に乗り、競馬に出場する。ところが、競技中の事故により、馬は前脚を二本とも骨折してしまう。 金を喰う機械――それに違いなかった。仁右衛門は不…

潤一郎ラビリンス (16)

潤一郎ラビリンス〈16〉戯曲傑作集 (中公文庫)作者: 谷崎潤一郎,千葉俊二出版社/メーカー: 中央公論新社発売日: 1999/08/18メディア: 文庫 クリック: 2回この商品を含むブログ (8件) を見る 大正2〜13年発表の戯曲、『恋を知る頃』、『恐怖時代』、『お国と…

ウルフ 『オーランドー』

という次第で、今や部屋に残るは眠れるオーランドーと喇叭(ラッパ)手と伝記作家及び読者のみ。そして喇叭手たちはきちんと整列してひと吹き凄まじく 「〈真実〉だ!」と吹き鳴らした、 と、オーランドーは目覚めた。彼は伸びをした。立ち上った。われわれ…

森鷗外 『山椒大夫・高瀬舟』

短編集(新潮文庫)の感想まとめ。 『杯』 「わたくしの杯は大きくはございません。それでもわたくしはわたくしの杯で戴きます」 七人の娘が持つ銀の杯には 「自然」 の銘がある。彼女たちはその杯で泉の水を飲もうとするが、八人目の娘が持つ杯を見て嘲る。…

わんわん わーん Remix

暑い日の犬のうた - 窪橋パラボラ わんわん わーん - P elements なんか楽しそうなので、僕も参加してみました。 <コーラス> わんわん わーん わんわん わーん わわん わんわん わーん、 わん。 暑い日の犬のうた - 窪橋パラボラ 作詞 id:kubohashi 作曲 i…

クレーメルほか/マーラー 『ピアノ四重奏曲断章』

Gustav Mahler: Complete Editionより。 ギドン・クレーメル(vn)、ヴェロニカ・ハーゲン(va)、クレメンス・ハーゲン(vc)、オルグ・マイセベルク(pf)による演奏。1994年録音。 交響曲と歌曲で知られるグスタフ・マーラー(1876-1911)による現存する…

『日々の泡』とビリー・ストレイホーン

「忙しいかね」コランは訊いた。 「いいえ。お料理はもう出来上がるところで」 「それなら、リヴィング・ルームに来てビグルモワの基本を教えてくださらないかな。ぼくがレコードをかけるから」 「デューク・エリントン編曲の『クロエ』とか『ジョニー・ホッ…

猫の言葉と人の言葉 (5)

我が家の猫の実態。 猫はうそをつかない。でも、自分に都合の悪いことは言わない。 しかると、言い訳することがある。 ときどき、寝言を言う。 空腹じゃないのに、「時間だから」と食事を要求したりする。 人間同士がしゃべっているとき、いつの間にか会話に…

北村透谷を読む

『北村透谷選集』(岩波文庫)を読んだ。 本書には、北村透谷(1868-1894)の遺した作品が、詩、評論・感想、書簡・手記、小説の順に収録されている。 恋愛は人世の秘鑰(ひやく)なり、恋愛ありて後人世あり、恋愛を抽(ぬ)き去りたらむには人生何の色味か…

盗聴器設置事件

都城工業高:職員室に盗聴器…2年前から設置? 宮崎 - 毎日jp(毎日新聞) 宮崎県都城市の県立都城工業高の学科職員室で、盗聴器が見つかったことが分かった。少なくとも2年前には職員室にあったとの職員の証言もあり、学校は4日、県警都城署に届けた。 (…

シャイー/マーラー 『交響曲第10番』

Gustav Mahler: Complete Editionより。 リッカルド・シャイー指揮、ベルリン放送交響楽団演奏。1986年録音。 『交響曲第10番』 はマーラーの11番目の交響曲。1910年に作曲を開始したが、翌年に作曲者が没したため、未完成となった。5つの楽章からなる構成は…

カラヤン/マーラー 『交響曲第9番』

Gustav Mahler: Complete Editionより。 ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団演奏。1982年ライヴ録音。 『交響曲第9番』 は1909〜1910年に作曲された。グスタフ・マーラーが10番目の交響曲に 『第9番』 という題をつけた…

3匹の子猫

昨夜、友人から 「自宅の車庫で猫が鳴いている」 というメールがきた。 今朝になってまだ鳴いているので、山積みの荷物をかき分けたところ、子猫が出てきたのだそうである。 というわけで、上がその写真。ちっちゃいのが3匹も! 母猫もいるんだけど、あまり…

猫の町、谷中へ猫に会いに行く

長かった梅雨のあけた翌日、谷中へ出掛けた。 JR 日暮里駅から谷中霊園を通り、坂の多い街並みをジグザグに下のほうへ降りていくと、そこは猫の町である。 写真は 「夕やけだんだん」 と名付けられた階段。以前、家人がここを訪れた際は、ちょうど猫の集会が…

23年ぶりの谷中霊園

上の写真は昭和62年1月に撮影したものである。昭和初期の写真だと言われても信じるひとが多いかもしれない、それくらい古びた風情の写真だが、当時、一眼レフにモノクロ・フィルムを入れて出かけたときに撮影したのだ。 場所は谷中霊園の付近。何屋さんとい…

ジュリーニ/マーラー 『大地の歌』

Gustav Mahler: Complete Edition より。 カルロ・マリア・ジュリーニ指揮、フランシスコ・アライザ(テノール)、ブリギッテ・ファスベンダー(コントラルト)、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団演奏。1984年録音。 第九のジンクス ベートーヴェン、シュ…

新潮文庫の100冊・2010年版

新潮文庫の100冊 2010 以前、『かもめのジョナサン』の悪口を散々書いたのだが、とうとう今年の 「新潮文庫の100冊」 からジョナサンが消えた。1979年からずっと100冊に選ばれ、夏の書店で平積みにされていたのだから、ずいぶん息の長い本だったことになる。…

オーウェル 『カタロニア讃歌』

『カタロニア讃歌』 はイギリス人ジョージ・オーウェル(1903-1950)が、1936〜1937年にスペイン市民戦争に民兵として参加した際のことを書き、1938年に発表したルポルタージュ(ノンフィクション)。著者の生前にはほとんど売れず、注目を集めたのは1980年…

ショルティ/マーラー 『交響曲第8番 《千人の交響曲》』

Gustav Mahler: Complete Edition より。 サー・ゲオルク・ショルティ指揮、ウィーン国立歌劇場合唱団、ウィーン楽友協会合唱団、ウィーン年合唱団、シカゴ交響楽団ほか演奏。1971年録音。 『交響曲第8番』 は1906〜1907年に作曲され、1910年に作曲者自身の…

シノーポリ/マーラー 『交響曲第7番 《夜の歌》』

Gustav Mahler: Complete Edition より。 ジュゼッペ・シノーポリ(1946-2001)指揮、フィルハーモニア管弦楽団演奏。1992年録音。演奏時間約87分。 1904〜1905年に作曲された交響曲で、5つの楽章から構成される。《夜の歌》 という副題のついた第2楽章と第4…

アバド/マーラー 『交響曲第6番 《悲劇的》』

Gustav Mahler: Complete Editionより。 クラウディオ・アバド指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団演奏。2004年ライヴ録音。演奏時間約79分。 1904年に完成された交響曲で、ハンマーなどさまざまな打楽器を使用し、リズムを主体にした重厚な楽曲になっ…

バーンスタイン/マーラー 『交響曲第5番』

Gustav Mahler: Complete Editionより。 レナード・バーンスタイン指揮、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団演奏。1987年ライヴ録音。 1902年に完成した交響曲で、マーラーは作曲中に妻アルマと出会い、結婚している。5つの楽章から成り、演奏時間は約70分…

ブーレーズ/マーラー 『交響曲第4番』

Gustav Mahler: Complete Editionより。 ピエール・ブーレーズ指揮、クリーヴランド管弦楽団演奏。1998年録音。 1900年に完成し、翌年に初演された交響曲で、演奏時間は53分と最も短い。4つの楽章からなるが、一番長い第3楽章にクライマックスが置かれ、ソプ…