ウルフ 『オーランドー』

 という次第で、今や部屋に残るは眠れるオーランドーと喇叭(ラッパ)手と伝記作家及び読者のみ。そして喇叭手たちはきちんと整列してひと吹き凄まじく
「〈真実〉だ!」と吹き鳴らした、
 と、オーランドーは目覚めた。彼は伸びをした。立ち上った。われわれの前に真裸ですっくと立った、トランペットは〈真実〉! 〈真実〉! と高鳴り続け、もうこれはすっぱり認めるしかありません――彼は女だったのです。


 ヴァージニア・ウルフ 『オーランドー』 第三章 杉山洋子訳

 『オーランドー』 はヴァージニア・ウルフが1926年に発表した長編小説。
 16世紀のイギリスに男として生まれ、途中で女に変身し、1926年に36歳になったという架空の人物オーランドーの伝記という形式の、奇想天外な物語である。
 面白いのは、《伝記作家》 と称する語り手のユーモラスで饒舌な語り口だ。また、これほど滅茶苦茶な話なのに、しっかり構成されていて、破綻がないのが素晴らしい。
 『灯台へ』 も面白かったが、本作はげらげら笑いながら、イギリス文学の一端に触れることが出来る名作である。


オーランドー (ちくま文庫)

オーランドー (ちくま文庫)