ル=グウィン 『ゲド戦記6 アースシーの風』
- 作者: アーシュラ・K.ル=グウィン,ディビッド・ワイヤット,Ursula K. Le Guin,清水真砂子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/03/17
- メディア: 単行本
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
- 2001年9月に発表されたシリーズ最新刊。原著刊行の2日前に、9・11テロが起こっている。
- 1〜5の主人公たちが勢ぞろい。さらに新キャラ、ハンノキとセセラクが加わり、ずいぶんにぎやかな小説になっている。
- 時代は4の十数年後。ゲドは70歳くらい。テナーは50代。レバンネンとハンノキは30代。テハヌーとアイリアンとセセラクは20代。各年齢層が揃っている。
- 6のハンノキは、5の 『湿原で』 に登場する農場主ハンノキとは別人。
- ゲドはすでに魔法の力を失っており、ゴント山の麓に住む普通の農夫である。
- ハンノキは自分が抱えている問題について相談するために、遠い島からゲドを訪ねるが、ゲドの答えは 「猫を飼うべし」 であった。でも、ちゃんと猫は役に立つのである。
- というか、第6巻になって猫を登場させるのはずるいと思う。
- 4では謎だった小麦粉の入手方法が明らかにされる。ゲド自身が町に出かけて、農作物と交換に小麦を山麓まで運び上げていたのだ。
- 登場人物が多い分、それぞれが抱えている問題も多様だ。生と死の境界を表す 《石垣》 の問題。人間と竜の関係の問題。アーキペラゴとカルカド帝国の外交問題。レバンネン王の結婚問題。テハヌーの自分探し問題等々。
- これらの諸問題を一挙に解決しようとするのだから力業である。だが、作者は一つの問題を別の問題にぶつけることによって、大半を解決していく。
- 4に描かれた暴力や虐待の場面はほとんど出てこない。
- 4でテナーが延々と述べ続けたフェミニズム問題は、テハヌーやアイリアンの世代においてはすでに大半解決しているように見える。
- 4と5のメインテーマだったジェンダー問題は、6に出てくる多民族、異宗教、異文化といったグローバルなテーマの前に影が薄くなっているようだ。
- 5に登場する女は嫉妬することがなかったが、6では女の嫉妬がしっかり描かれている。
- 恋愛も十分に描かれるようになり、ほとんど恋愛小説といってもよいくらい。
- 長いけれども細かなエピソードが多く、全体にテンポが速い。
- 過去のル=グウィン作品に比べて、文章がずっと読みやすくなっている。翻訳も良い。
- 最後のページは良いですよ。本当。