島崎藤村 『家 (上巻)』

家 上巻 (新潮文庫 し 2-4)

家 上巻 (新潮文庫 し 2-4)

 上巻は明治43年、下巻はその翌年に発表された作品だが、元々別個の小説だったものをあとから改稿して一作に仕上げたらしい。上下巻あわせて450ページくらいしかないのに、2冊に分かれているのは、そういう理由からなのだろうか。
 作中に描かれる年代は、明治31〜43年頃であり、藤村の自伝的小説としては 『春』 の続編にあたる。冒頭から大勢の人物が登場するが、多くは 『春』 や 『夜明け前』 でおなじみの顔ぶれである。(逆にいうと、『春』 を読んでいないと、わけがわからないところもある。)もっとも、登場人物の名前が全員変更されていて、捨吉は三吉になっている。