島崎藤村 『家 (下巻)』

家 (下巻) (新潮文庫)

家 (下巻) (新潮文庫)

 小説 『家』 に描かれている年代の前後、作者・島崎藤村自身に起こった出来事を要約すると以下のとおりである。*1

  • 明治32年
    • 4月、小諸義塾教師として信州小諸町へ赴任。妻冬子と結婚。
  • 明治33年
    • 5月、長女緑出生。
  • 明治35年
    • 3月、次女孝子出生。
  • 明治37年
    • 春頃より長編 『破戒』 起稿。
    • 5月、三女縫子出生。
  • 明治38年
    • 4月、小諸義塾を辞して上京。西大久保(新宿)に住む。
    • 5月、三女縫子死去。
    • 11月、長男楠雄出生。
    • 『破戒』 脱稿。
  • 明治39年
    • 3月、『破戒』 自費出版。好評を得る。
    • 4月、次女孝子死去。
    • 6月、長女緑死去。
    • 10月、浅草新片町へ転居。
  • 明治40年
    • 9月、次男鶏二出生。
  • 明治41年
    • 4〜8月、長編 『春』 を東京朝日新聞に連載。
    • 三男蓊助出生。
  • 明治42年
    • 『芽生』 等、12の短編を発表。
  • 明治43年
    • 1〜5月、『家』 上巻を読売新聞に連載。
    • 6月、甥高瀬親夫死去。
    • 8月、四女柳子出生。妻冬子死去。
  • 明治44年
    • 1〜4月、『犠牲』 と題して、『家』 下巻を 「中央公論」 に発表。
    • 3月、三兄友弥死去。
    • 11月、『家』 上・下巻を同時に刊行。

 藤村は7人の子のうち3人を幼いうちに亡くしている。また、『家』 の執筆から出版までの間に、子供たちを含め、登場人物のモデルとなった親族6人が亡くなっているのである。
 『家 (下巻)』 は、長女が病没するあまりにも悲しい場面から始まる。(この後さらにひどい展開になるので、当ブログの読者は読むのを止めたほうが良いかもしれません。)

*1:参考文献 - 島崎蓊助(藤村の三男)編 「年譜」 『日本文学全集 8 島崎藤村集』 河出書房新社