ケルビーノ詰め合わせ
モーツァルトのオペラ 『フィガロの結婚』(全4幕) より、ケルビーノが登場する映像を集めてみた。(演奏者名等は省略。)
ケルビーノはアルマヴィーヴァ伯爵家に仕える小姓。少年の役だが、通常、男装したメゾソプラノ歌手によって演じられる。ケルビーノは美少年であり、まわりの少女たちは彼に夢中になるが、彼は同年代の女の子には興味がなく、年上の伯爵夫人やスザンナ(伯爵家の侍女)に惹かれている、という設定である。
女性歌手が演じる少年というのは 「半ズボン役*1」と呼ばれる古典的な役柄なのだが……。
ケルビーノのアリア(その1)
第1幕より、スザンナ(実質的な主役である)とケルビーノのレチタティーヴォ。続いて、ケルビーノのアリア 「自分がどんな人間で、何をすればよいのかわからない……」。
ケルビーノは伯爵夫人に冷たく扱われた愚痴を言うために現れたにも関わらず、スザンナの顔を見た途端に彼女を口説き始める。やたらと惚れっぽい性格なのだ。
スザンナが作っている伯爵夫人のナイト・キャップのリボンを奪うケルビーノ。そして彼はリボンの匂いを嗅ぎながら、自作の歌を歌う。(ポケットから取り出した紙に詩が書いてあるという設定になっている。)
以前書いたエディット・マティスのケルビーノに比べると、はるかに官能的な演出になっているのがわかる。
ケルビーノのアリア(その2)
第2幕より、ケルビーノのアリア 「恋とはどんなものだかご存じのあなたがた」。
悪戯がすぎたケルビーノは伯爵からクビを言い渡され、軍隊へ行くことを命じられる。そんな彼が伯爵夫人とスザンナ(ギターを持っているほう)に別れを告げに来る場面で、またしても彼は自作の詩が書かれた紙を取り出し、歌を歌う。
コスプレ風に衣装をどんどん変えるのが 『フィガロの結婚』 の特徴でもある。ばっちり軍服を着たケルビーノは真面目に歌い、二人の女はイチコロにされる。
スザンナのアリア
スザンナのアリア 「おいで、お膝をまげて」。上の軍服アリアの直後の場面である。
ケルビーノのあまりのかわいさに、年上の女たちはよってたかって彼を女装させてしまう。実に倒錯的な場面である。時代とともに演出方法は変わっているのだろうが、モーツァルトの時代の観客は驚いたのではないだろうか。
続いて同じアリアを、2006年のザルツブルク音楽祭から。
スザンナはケルビーノのズボンを脱がす。下着姿の彼は二人の女に濃厚なキスをされる。女装の話などどこかへ行ってしまって、ねっとりとした性の誘惑のみが演じられる、という超演出になっているわけだが、いくらなんでもこれはやりすぎだろう。モーツァルトだったら喜ぶかもしれないが。
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