2009-04-29から1日間の記事一覧

太宰治 『地図 初期作品集』

id:darkglobeやid:kamioyou-taはぜひ読むべし。

堺港事件

慶応四年二月、泉州、堺港で水底の測量を行っていたフランス水兵を、土佐の兵が狙撃。暴動となった。堺港事件である。 「申し上げます。明後二十三日には堺の妙国寺で、土佐の暴動人に切腹を言い付けるそうでございます。つきましては、仏蘭西側の被害者は、…

谷崎潤一郎 『一と房の髪』

大正15年発表の短編。横浜の外国人用アパートを舞台に、関東大震災当日の出来事が語られる。 ヒロインはロシア革命後、日本に亡命した貴族の夫人・カティンカ。男たちは彼女のとりまきの混血児たちである。(語り手のディックは彼らの一人である。) 地震の…

谷崎潤一郎 『青い花』

大正11年発表の短編。主人公の男、岡田と、18歳の少女・あぐりの物語。『痴人の愛』 (大正13年発表)のプロトタイプのような小説である。主人公の内面の描写が延々と続き、かなり観念的だ。ストーリーらしきものといえば後半、横浜に洋服を買いに行くくだり…

谷崎潤一郎 『お才と巳之介』

大正4年に発表された150ページくらいの中編小説。江戸時代を舞台にした 《毒婦もの》 という点、前年に書かれた 『お艶殺し』 に通じるものがあるけれど、本作は全編ドタバタ喜劇である。 商家の次男坊・巳之介は女中・お才に恋をする。しかし、彼女はとんで…

谷崎潤一郎 『富美子の足』

大正8年に書かれた短編小説。足フェチの話である。 谷崎32歳のときの作品だが、晩年に 『瘋癲老人日記』 を書いた頃の作者を思わせる老人が登場する。 芸者上がりの妾・富美子の足の描写が延々何ページも続く。老人は最後、病気で寝たきりになり、富美子に額…

谷崎潤一郎 『The Affair of Two Watches』

明治43(1910)年に発表された谷崎最初期の短編。珍しくナンセンス・ユーモア小説である。「時計事件」 という意味の英語の題名がつけられているが、題名が英語であることにはちゃんと意味がある。 内容はほとんどわけのわからない滑稽噺だが、全体が19世紀…