谷崎潤一郎 『一と房の髪』

 大正15年発表の短編。横浜の外国人用アパートを舞台に、関東大震災当日の出来事が語られる。
 ヒロインはロシア革命後、日本に亡命した貴族の夫人・カティンカ。男たちは彼女のとりまきの混血児たちである。(語り手のディックは彼らの一人である。)
 地震のため煉瓦作りのアパートは崩壊、近くに火の手が迫っているにも関わらず、彼らは女を縛って心中しようとしたり、決闘を始めたりして、相当めちゃくちゃだ。後半、何度もどんでん返しがあって、その無茶苦茶な展開がそれなりに面白い。
 最後は 『卍』 (昭和3年発表)とほぼ同じ結末だった。