谷崎潤一郎 『The Affair of Two Watches』

 明治43(1910)年に発表された谷崎最初期の短編。珍しくナンセンス・ユーモア小説である。「時計事件」 という意味の英語の題名がつけられているが、題名が英語であることにはちゃんと意味がある。
 内容はほとんどわけのわからない滑稽噺だが、全体が19世紀イギリスの作家、ジェローム・K・ジェロームの名作 『ボートの三人男』 へのオマージュになっているのだ。こういうネタを見つけるとうれしくなる。小説を読む楽しみの一つである。