谷崎潤一郎 『春琴抄』
上は、主人公・佐助が自らの目を針で突き、盲目となったことを春琴に告げる本編最大のクライマックスである。……お師匠様私はめしいになりました。もう一生涯お顔を見ることはござりませぬと彼女の前に額ずいて云った。佐助、それはほんとうか、と春琴は一語を発し長い間黙然と沈思していた佐助は此の世に生れてから後にも先にも此の沈黙の数分間程楽しい時を生きたことがなかった……
僕は何度もこのくだりを読み返し、その度に陶酔と感動を味わう。
美しい文章に彩られた愛の絵巻。谷崎文学の最高傑作のひとつである。
- 作者: 谷崎潤一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1951/02/02
- メディア: 文庫
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