掛布雅之とバルタン星人

バルタン星人はなぜ美しいか―新形態学的怪獣論―

バルタン星人はなぜ美しいか―新形態学的怪獣論―

10年以上も前のことなんですが、テレビのトーク番組で掛布雅之がこんな話をしていました。

息子の誕生日に、ヤツを驚かそうと思って、バルタン星人の着ぐるみを借りてきたんだけどね。オレが着ようと思ったら、小さくて入らないわけ。それで、急遽、カミさんにバルタン星人を着せてね。息子がテレビを見ているときに、オレが部屋の電気を全部消して、そこへ目玉をピカピカ光らせたバルタン星人が入ってくるんですよ。
息子は最初かなり驚いてたんだけど、オレがついてるから怖くないみたいで、だんだん盛り上がっちゃって、オレも一緒になって楽しんじゃいました。

記憶に頼って書いているので、事実と違っている部分があるかもしれませんが、だいたいこんな感じの話だったと思います。

それにしても、この話はすごいですね。
何がすごいかというと、二つあると思うんです。

まず、バルタン星人の着ぐるみを本当に借りてきてしまったというところ。
当時(といっても年代不明ですが)、パーティグッズの着ぐるみなんて売ってなかったわけですから、たぶん円谷プロから本物のバルタン星人を借りてきたんでしょうね。
一度だけバルタン星人の着ぐるみを見たことがあるのですが、すごく細身に出来ています。体格の良いスポーツ選手みたいなひとが着られるような代物ではないんです。
それから、脚の部分がタイツを穿いているように見えますが、あれはスパッツです。というか、股引みたいな素材だと思うんですけど、スプレーで塗装してあって、ごわごわした触り心地のものです。
でも、アレを女性が着たら、脚の線が見えて、かなりエロい感じになるんじゃないかと思います。上半身の幾何学的なデザインとのアンバランスが余計にすごいと思うんですよね。

もう一つのすごい点は、シチュエーションです。
「いつものバイトの子が休みだから、今日はあんたが着ぐるみに入ってくれよ」みたいな、急遽、代役を頼まれて、着ぐるみを半ば無理やり着せられてしまう、というシチュエーションって、たまらないんですよ。
着ぐるみを自ら着ようとするひとは、いろいろと変身願望とか持っていて、それなりの覚悟で事に臨むわけですが、本人の意思に反して、いきなり着ぐるみを着せられてしまう。暑いし息苦しいし、視界は狭いし、かなり拘束感があるわけですから、普通だったら嫌がるか、やけくそになるかだと思うんです。
でも、家族のため、子供のため、一生懸命にバルタン星人を演じる奥さんって、けなげじゃないですか。
そんな奥さんの着ぐるみ姿を想像すると、ドキドキしちゃいます。