Miles Davis Quintet / Live In Europe 1969: The Bootleg Series Vol.2

Miles Davis Quintet: Live in Europe 1969

Miles Davis Quintet: Live in Europe 1969

 "Live in Europe 1967: The Bootleg Series Vol.1" の続編として、2013年に発表された CD 3枚、DVD 1枚のセット盤(BOX ではなくデジパック)。《ロスト・クインテット》 と呼ばれるメンバー編成の演奏を集めたライヴ・アルバムである。(すべてモノラル録音。)
 CD 1 は "1969 Miles Festiva De Juan Pins" とまったく同じ音源(アンティーブのジャズ・フェスティヴァル出演1日目)を収録。ただし、本作はリヴァーブ等の加工が施されておらず、生に近い音である。Amazon のレビューを見ると音質が劣化しているようなことを書いている人がいるが、加工されていないだけだと思う。("Milestones" はリヴァーブありのヴァージョンのほうが断然かっこよかった。)
 CD 2 は同じジャズ・フェスティヴァル出演2日目の演奏を収録。同じ会場でのライヴだが、曲が半分くらい入れ替わっている。どちらも選曲は、50年代から演奏されているスタンダード・ナンバーあり、当時未発表の新曲ありと変化にとんだ内容だ。演奏自体はかなり前衛的で、パワー全開。2日間とも甲乙つけがたい充実したライヴだと思う。
 CD 3 はストックホルムにおけるライヴ。 (1)〜(5) は11月5日の昼の部、(6) は同じ日の夜の部の演奏らしい。(1) の司会者によるアナウンスに続いて、(2) "Bitches Brew" が始まった途端、チック・コリアのエレピからガリガリと変なノイズが出て、2分くらいでエレピは沈黙してしまう。キーボードなしのまま演奏は続行されるが、10分を過ぎたあたりで、チックはアコースティック・ピアノを弾いて復活。そのまま、(5) の終わりまでアコースティック・ピアノを弾き続けるというハプニングありのステージである。珍しいといえば珍しいが、少なくとも前半まではモニター・スピーカーなど使えずに、演奏者も観客もピアノの音は聞こえないままだったのではないか。 (4) "Nefertiti" に至ってようやくチックのピアノが大々的に活躍するのだが、これは圧巻であった。また、夜の部の演奏 (6) "This" はチック・コリア作曲による未発表のフリー・ジャズ曲。チックはエレピで再登場するが、またしても開始間もなく音が出なくなってしまうという、ほとんど NG 集のような録音である。
 DVD はベルリン・フィルハーモニー・ホールにおけるライヴで、わりときれいなカラー映像作品だ。(DVD のみ単独で発売されたこともあるし、ブートレッグ CD も出ていたらしい。)冒頭、司会者のメンバー紹介のところで、ドラムのジャック・ディジョネットの紹介が終わって、次はベースだな、とみんなが思っているところへ、マイルスがステージに登場してしまうハプニングがあって、ずっこける。でも演奏はバッチリ。すばらしい。