Miles Davis / Bitches Brew Live

Bitches Brew Live

Bitches Brew Live

 まぎらわしいタイトルのアルバムが、2011年に発売された。
 前半3曲25分は、1969年7月5日、ニューポート・ジャズ・フェスティヴァルにおけるライヴ録音(ブートレッグも出ていない未発表音源だったらしい)。《ロスト・クインテット》 当時のメンバーだが、ウェイン・ショーターの会場到着が遅れて欠席となったため、4人で演奏しているという変わり種ライヴである。音質はそれほど悪くはないが、ドラムの音がややこもり気味。
 後半6曲35分は、1970年8月29日、ワイト島フェスティヴァルにおけるライヴ録音。以前は同フェスティヴァルのライヴを集めたオムニバス盤に収録されていたほか、映像作品の DVD が発売されている。マイルス名義の CD に収録されたのは、今回が初めてとのこと。音質、バランスともに最高品質だと思う。
 サックス奏者、ゲイリー・バーツが加入。キーボードは左がキース・ジャレット、右がチック・コリアである。また、デイヴ・ホランドはすべての曲でエレクトリック・ベースを弾いている。

 上の動画が、ワイト島フェスティヴァルの映像。チック・コリアが弾いているエレピには HOHNER と書かれている。(ローズじゃなかった。)
 演奏曲目を尋ねられたマイルスが、「Call it anything (何とでも呼べ)」と答えたというエピソードがあり、そのままタイトルになっている*1。面白いエピソードだとは思うのだが、マイルスは他人(特に参加メンバー)が作曲した楽曲をちゃんとクレジットしようとしないクセみたいなものがあって、いろいろトラブルの原因となっているようだ。(ジョー・ザヴィヌルは訴訟を起こし、後に和解している。)
 ワイト島フェスティヴァルは6日間でのべ60万人以上の観客を動員した歴史的なイベントだった。客席の後ろのほうは原っぱになっていて、テントを張っている人もいる。ところが、演奏内容のほうは決して大ざっぱにならず、マイルスほかソリストは爆発的なプレイをしながらも、まとまりのあるバンド演奏になっている。フィルモアのときのような冗長な感じもなく、非常に聴きやすいアルバムになっていると思う。

*1:CD は正式な曲名がクレジットされている