Miles Davis / In Person Friday And Saturday Nights At The Blackhawk, Complete

 サンフランシスコのジャズ・クラブ 《ブラックホーク》 で録音されたライヴ盤。発売された順でいうと、マイルスにとって最初のライヴ・アルバムであり、あらかじめレコード発売する前提で準備・演奏・録音された作品である。
 《ブラックホーク》 は1949〜1963年に開かれていたクラブで、200席収容。マイクを使わずにジャズ・コンボの演奏を聴かせる、音響の良いハコであったらしい。
 オリジナル LP および CD は "Vol.1" と "Vol.2" の2枚に分かれ、それぞれ6曲入りで発売された。さらに、2003年には本記事でとりあげる全29曲4時間、2日間のライヴのほぼ全曲を演奏順に収録した4枚組 CD BOX の "Complete" 盤が発表されている。
 ふだんから神経質で不機嫌で尊大な態度をとっていたマイルスだが、初めてのライヴ・レコーディングということでさぞガチガチに緊張しているかと思えば、まったくそんなことはなくて、きわめてリラックスした演奏で、明るいマイルスを聴けるのが本作の特徴だ。(ガチガチに緊張しているのは、次作の "At Carnegie Hall" である。)
 マイルスの演奏はある程度、様式化されていて、決してチャレンジングではないが、良い意味で安心して聴いていられる面がある。また、本作ではウィントン・ケリーが大活躍、良い雰囲気を作りだしていると思う。
 マイルスのライヴ盤 CD BOX は後年に多くの種類が出ているのだけれど、僕はこの『ブラックホーク』が好きで、たぶん一番たくさん聴いている。(10年間で20回以上は聴いたはずだ。)こういう流しっぱなしにできるような、リラックスして聴けるアルバムは、実はマイルス作品の中では異色なんだけどね。