Miles Davis & John Coltrane / So What


 上のリンク先 Amazon のレビューにおかしなことが書かれているので、以下の僕の記述とリンク先のアルバムが同一商品かどうか不明。万一購入の際はそのつもりでお願いします。

 1960年、マイルスの欧州ツアーは4月10日まで続いた。当時の聴衆に対して、ジョン・コルトレーンの退団が事前に伝えられていたかどうか不明だが、通称 《マイルス・スクール》 にとって、このツアーはコルトレーン卒業記念公演みたいなものである。というか、そのつもりで聴かないとやってられない。
 4月9日のオランダにおけるライヴ盤というのは2種類あって、一方がスヘフェニンゲンの Kurhaus における録音(本アルバム)、他方が同日深夜に行われたアムステルダムのコンセルトヘボウにおける録音である。同じ日の夜間に移動をはさんで二つの都市でライヴを行ったのだ。日本でいえば、レコード大賞のあと紅白歌合戦に出演するようなものではないか。違うか。
 さて、本アルバムは1980年代に日本のキング・レコードから LP 盤として発売されたもの。おそらく元の音源はそれ以前から出回っていたブートレッグである。中山康樹『マイルスを聴け!』(双葉社)には音質劣悪と書かれているが、10年くらい前に出た CD はかなり改善されている。前掲のストックホルム盤には及ばないが、十分鑑賞に値するレベルだと思う。
 全5曲入り。(1) は17分におよぶ長尺演奏。そのうち約8分以上がコルトレーンのソロである。先発のマイルスはなんとなく体力を温存しているようなところがあるが、コルトレーンジミー・コブは後さきのことなど考えず、完全燃焼する。(本当に長いソロなのだけど、これは感動した。)その後に出てくるウィントン・ケリーは呆然としてしばらくコードしか弾けなくなってしまうのだ。
 (4) のソロ先発はポール・チェンバース。2番手のマイルスは「ジャン・ピエール」*1 のテーマを吹いている。3番目にコルトレーン登場。ブヒバヒ激しいソロを吹くのだが、最後は収拾がつかなくなって、マイルスがいきなりエンディングへ持ち込むのである。ふつうならテナーの次はピアノ・ソロなのだが、時間が押していたのかもしれない。
 なーんてことをゲラゲラ笑いながら聴くうちに、あっという間に終わる46分間。ジャズの帝王と巨人はスゴい音楽を遺してくれたものである。

*1:"Jean Pierre" は1980年代の主要レパートリーだが、60年の時点で演奏されていたのである。