Herbie Hancock, Michael Brecker, Roy Hargrove / Directions in Music: Live at Massey Hall

  • 2001年10月25日、トロント(カナダ)でのライヴ録音。
  • Herbie Hanock (p), Michael Brecker (ts), Roy Hargrove (tp, flh), John Patitucci (b), Brian Brade (ds)
  • 2001年10月、トロントのマッセイ・ホールでのライヴ演奏を録音したライヴ盤。マイルス・デイヴィス(1926〜1991)とジョン・コルトレーン(1926〜1967)の生誕75周年を祝うプロジェクトの一環として行われたツアーからの演奏であり、二人の 《ジャズの巨人》 にちなんだ選曲・構成になっている。
  • グループ全体を取り仕切っているのはハービー・ハンコック。ベテラン・テナー奏者、マイケル・ブレッカー(1949〜2007)はコルトレーンが憑依したかのような熱演だ。1969年生まれのロイ・ハーグローヴは、フュージョンとメインストリーム両方の分野で活躍するトランペット奏者。ジョン・パティトゥッチとブライアン・ブレイドの二人は、ちょうどこのライヴの頃からウェイン・ショーター・カルテットで共演してきたリズム・セクション。と、このようなクインテットである。
  • 全8曲入り。作曲者別でいうと、マイルスが1曲、コルトレーンが2曲、スタンダード・ナンバーが1曲、メンバーのオリジナルが4曲となる。だが、マイルスやコルトレーンの曲=ジャズ・ファンにとってなじみのある曲ほど原曲からかけ離れたアレンジになっていて、逆にオリジナル曲のほうが(テーマに関しては)メロディアスな感じがする。
  • (1) 以下、クインテットの演奏はすべてパティトゥッチとブレイドの重たくて強烈なリズムの上に乗っかっているといって良いだろう。ハービーのピアノはかなり難解なフレーズの連発なのだが、ベースとドラムがしっかりと受け止めていると思う。
  • (3) "So What / Impressions" は So What がマイルス、Impressions がコルトレーン作曲とクレジットされているが、テーマ部分を別にすれば実質同じ曲。超重量級のベース・ソロから始まり、意表をついてスローな16ビートで演奏される。
  • (4) はブレッカー、ハンコック、ハーグローヴの3人による共作で、名曲 "Stardust" のフレーズが引用されているバラード。これがまた美しい曲で、メンバー全員の演奏も素晴らしい。
  • (5) "Naima" はコルトレーンの有名曲をブレッカーが無伴奏ソロで吹く。ブレッカーは熱心なコルトレーンのフォロワーだった人だけれど、ここでのブレッカーは何か突き抜けてしまっている。神がかり的な7分半である。
  • (7) はガーシュウィン作曲のバラード。マイルスとギル・エヴァンスの共演作 "Miles Ahead" に収録されていたレパートリーであり、ブレッカーのアルバムでも演奏されていた曲だ。ハービーのピアノは、ギル・エヴァンス・オーケストラの複雑なコードをなぞっているようだ。ハーグローヴ、ブレッカーともに完璧な演奏だと思う。
  • (8) はブレッカーのオリジナル。後半、ハービーとブレイドがブチ切れる。ブレイドが叫ぶ。物凄いクライマックスである。
  • あらためて聴きなおしてみたのだが、最初から最後まで盛り上がる名演奏だと思った。本アルバムとウェイン・ショーターの "Footprints Live!" の2枚は、21世紀初頭を飾る名盤といってよいのではないだろうか。