Herbie Hancock / Possibilities

Possibilities

Possibilities

  • 2005年録音。
  • Herbie Hancock (p, key), Greg Phillinganes, Chester Thompson (key), Stevie Wonder (harmonica), Carlos Santana (g), Nathan East (el-b), John Patitucci (b), Dennis Chambers (ds), John Mayer, Paul Simon (vo, g), Christina Aguilera, Sting (vo), etc.
  • スターバックス傘下の Hear Music *1 から発売されたオムニバス形式のヴォーカル・アルバム。1曲ごとに歌い手が変わり、新曲あり、スタンダード・ナンバーあり、往年のシンガーが自作の名曲を歌うのもあり、と、幅の広いポップ・アルバムになっている。ジャズの要素はほとんどないといってよく、正直、曲によってかなり当たりはずれがある。
  • 全10曲入り。(1) と (10) はハービーと参加ミュージシャンの共作による新曲。ほかはロック、ポップ、ラテン、R&B などさまざまなジャンルのカヴァー・ソング。バックをつとめるミュージシャンは一部重複するものの、1曲ごとに異なるメンバー構成でレコーディングがおこなわれている。
  • (1) はイントロなし、ジョン・メイヤーのヴォーカルとギターから始まるロック曲。8小節目のブレイクで入るハービーのピアノ・コードがめちゃめちゃかっこいい。これ1曲のために買っても損のないアルバムだと思う。
  • (2) はカルロス・サンタナのギターをフィーチャーしたラテン・ナンバー。ヴォーカルはアンジェリーク・キジョーという女性シンガー。どこを切ってもサンタナの音がする。オルガンを弾いているチェスター・トンプソンもサンタナのメンバーである(ジェネシスのドラマーとは別人)。ハービーのピアノ・ソロは後半に登場する。
  • (3) はカーペンターズがカヴァーしたヴァージョンで有名なレオン・ラッセルの曲。コブシをきかせたクリスティーナ・アギレラのヴォーカルは、原曲に近いかもしれない。
  • (4) はポール・サイモンが自作曲を歌う。グラミー賞受賞アルバム "Still Crazy After All These Years" (1975年)に収録されていた原曲では、メロディよりもホーン・セクションのオブリガートのほうが目立つようなアレンジだったが、本作ではよりメロディを生かしたアレンジになっており、原曲を超えている。ハービーの演奏も素晴らしい。
  • (5) はポーラ・コールのスロー・ナンバーを、ロンドンのスタジオでアニー・レノックス(オリジナルより年上)が歌う。後半、テンポが上がってピアノ・ソロが始まったところでフェイドアウト
  • (6) はトロントのスタジオで、スティングが自作曲を歌う。この曲のアレンジが一番ジャズっぽい感じがするけれど、これは原曲のほうが良かった。
  • (7) は U2 のカヴァー。ジョニー・ラングのヴォーカルとブルース・ギター、1987年生まれで当時18歳のジョス・ストーンのデュオで、これまたかっこいい。演奏開始2分47秒で、ようやくハービー登場。このピアノ・ソロはしびれた。
  • (8) はビリー・ホリデイ作のジャズ・ヴォーカル・スタンダード。バックは前半ピアノのみ。途中からチェロ、ベース、ドラムが加わる。ヴォーカルはダミアン・ライスとリサ・ハニガンのデュオだが、二人の声質、音域が似通っていて区別しにくく、伴奏に負けている。
  • (9) はスティーヴィー・ワンダーの名曲をラウル・ミドンが歌う。バックはシンセとリズムマシンが中心だが、極端にコード進行を変更したアレンジはちょっとキワモノ。スティーヴィーがハーモニカで参加している。
  • (10) はハービー等のオリジナル。唯一のインストゥルメンタル曲であり、トレイ・アナスタシオのヴォーカルはハミングのみである。転調が多くつかみどころのないスロー・ナンバーで、ほとんど鼻歌のようなふしぎな曲である。

*1:近年ではポール・マッカートニー等のアルバムをリリースしているレーベル。