キング・クリムゾン/USA


  • 1975年発表のライヴ・アルバム。"USA"。
  • メンバーは、ロバート・フリップ(g, mellotron)、デヴィッド・クロス(vln, key)、ジョン・ウェットン(b, vo)、ビル・ブラッフォード(ds)。ほか、エディ・ジョブソンのヴァイオリンとエレクトリック・ピアノがオーヴァーダビングされている。
  • 1974年6月に行われたアメリカ・ツアーのライヴ録音を収録したアルバム。同年に発表された "Red" 以前の演奏であり、デヴィッド・クロスは正式メンバーとしてクレジットされている。ただし、(2)、(3)、(6) はエディ・ジョブソンがスタジオで録音したトラックに差し替えられている。
  • 長い間 CD 化されなかった作品だが、『アースバウンド』と同時期の2002年にようやく CD が発売された。
  • 僕が一番最初に(かつリアルタイムで)聴いたクリムゾンのアルバムであり、今でも本作が一番好きだ。いや、本当に最高傑作なのである。
  • というわけで、1曲ずつ解説したい。(1) "Walk On ... No Pussyfooting" は、当時のライヴ会場のオープニング BGM。*1
  • (2) 「太陽と戦慄パートII」("Lark's Tongues In Aspic Part II")。突然始まるディストーション・ギター、複雑でヘヴィーなリフ。スタジオ録音版より数倍迫力があり、間違いなくこの曲のベスト・テイクだと思う。エディ・ジョブソンのヴァイオリンの音もしびれる。
  • (3) 「人々の嘆き」 ("Lament")。ジョン・ウェットンのヴォーカルに導かれて静かに始まり、途中で爆音に変わる曲。これもライヴ盤のほうが断然良い。
  • (4) 「放浪者」("Exailes")。ロバート・フリップの重たいメロトロンの上に、デヴィッド・クロスのフリーキーなヴァイオリンのフレーズが重なっていく前半。後半は楽器を交代して、クロスがメロトロンを弾く。フリップのギター・ソロが始まる瞬間が、この曲の聴きどころである。
  • (5) 「アズベリー・パーク」("Asbury Park")。クリムゾンのライヴに必ず登場する完全即興曲の中で、これがベスト。ビル・ブラッフォードのドラムから始まり、ギターとベースが絡むのだが、ベースはキーが分からず迷っている。ギターが F と指示を出し、3人が同時にダーン!と鳴らすところは最高である。
  • (6) 「イージー・マネー」("Easy Money")。これまたヘヴィーな曲だが、後半だんだん静かになり、ギター・ソロの途中でフェイドアウトしてしまう。
  • (7) 「21世紀の精神異常者」("21st Century Schizoid Man")。これもライヴで最もはじける曲。ギターとベースの音が歪んだまま、クライマックスへなだれ込んで行く。
  • (8) 「突破口」("Fracture")と (9) 「スターレス」("Starless")は CD 化された際の追加曲。(9) のイントロの美しいヴァイオリンなど聴きどころ満載なのだけど、2曲で25分もあってかなりおなかいっぱいになる。
  • アナログ LP では、最後の曲(21世紀)の終わった後の拍手がレコードの送り溝まで入っていて、拍手がエンドレス再生される仕掛けになっていた(ビートルズの "Sgt. Pepper's..." にも同じ仕掛けがあった)。CD ではその部分が再現されていて、(9) の終演後の拍手がリピート編集されて、2分半続いている。
  • 上の動画はアルバム全曲。僕の文章など読まなくていいから、とにかく聴いてみてほしい。


USA: 30th Anniversary Edition

USA: 30th Anniversary Edition

*1:1973年に発表されたロバート・フリップブライアン・イーノのコラボレーション・アルバムから、"The Heavenly Music Corporation" という曲が使用されている。"USA" では35秒しか聴けないが、元は20分以上におよぶ環境音楽である。