2009-06-08から1日間の記事一覧

「やっとるか。」

「ひばり。」と今も窓の外から、ここの助手さんのひとりが僕を鋭く呼ぶ。 「なんだい。」と僕は平然と答える。 「やっとるか。」 「やっとるぞ。」 「がんばれよ。」 「よし来た。」 この問答は何だかわかるか。これはこの道場の、挨拶である。助手さんと塾…

竹さん

明け方のまだ薄暗い時間、洗面所で助手(看護婦)の組長の 《竹》 がしゃがみこんで、床を拭いている。(はっきり書かれていないが、喀血した患者の血液を拭いているのだと思う。) 「竹さん、さっき、」声が咽喉(のど)にひっからまる。喘(あえ)ぎ喘ぎ言…

「いったいこの自由思想というのは、」と固パンはいよいよまじめに、「その本来の姿は、反抗精神です。破壊思想といっていいかも知れない。圧制や束縛が取りのぞかれたところにはじめて芽生える思想ではなくて、圧制や束縛のリアクションとしてそれらと同時…

太宰治 『パンドラの匣』

主人公の少年 《ひばり》 は結構金持ちである。父親は数学者で、「いつも貧乏」 と書かれているが、そんなことはない。畑を持っていて、終戦前後でも食べ物に困らないし、着物も羽織など良いものを着ている。 「……ひばりのお父さんて、偉いお方ですってね。…

伊坂幸太郎 『重力ピエロ』

息子が本棚から 『海辺のカフカ』 を持っていったので、かわりに借りる。