ジェネシス/アバカブ
- 1981年発表。"Abacab"。
- 「ポップでやたらと軽い」感のあった『アバカブ』だが、2007年リマスター盤を聴いて、かなり違った印象を抱くようになった。曲は軽いが、十分ヘヴィーでタイトなリズムで聴かせるアルバムなのである。
- 上の動画は、タイトル曲 "Abacab"。シンプルすぎるくらいシンプルな演奏で、こんなのバンドでやるような曲なのか?と思ってしまうのだが、アレンジやミキシングの細かいところでいろいろ遊びまくっている。ライヴでも人気のあった曲だが、ライヴ盤を聴くとつまらない。スタジオ録音ならではの傑作なのだ。
- ほかにも、アース・ウィンド&ファイアのホーン・セクションと共演したファンク(正確にはファンクのパロディ)があったり、レゲエで遊んでみたり、とにかく前作までのような完成度を追求するようなバンド演奏とは違った、チャレンジングな楽曲が並んでいるのである。
- もう1曲聴いてみよう。下の動画は "Who Dunnit?"。エフェクターを通したドラムの音が異常である。
このテクニックは“ゲート・リバーブ”として有名になった。“リバーブ”という言葉は、スタジオで電子的に作られる“残響(リバーブレーション)”からきている。“ゲート”はコンソールのノイズ・リダクション“ノイズ・ゲート”から。フィル・コリンズは「侵入者」*1を作るのに自分もひと役買ったこのサウンドに触発されて、自作のアルバム「夜の囁き」でもこのゲート・リバーブを多用した。
スペンサー・ブライト『ピーター・ガブリエル(正伝)』(音楽之友社)
- この独特のドラム・サウンドは、ピーター・ガブリエルとエンジニアのヒュー・パジャムのアイデアにより、フィル・コリンズが演奏して始まったのである。ヒュー・パジャムはガブリエルのアルバムやフィル・コリンズのソロ・アルバム『夜の囁き』("Face Value"、1981年)に続いて、『アバカブ』でもエンジニアとして参加している。また、ゲート・リバーブはパワー・ステーションのトニー・トンプソンなど1980年代を代表するドラムの「音」として大流行することになる。
- 本アルバムは全英1位、全米7位のヒットを記録。ジェネシスの快進撃は止まらない。
- アーティスト: Genesis
- 出版社/メーカー: EMI Europe Generic
- 発売日: 2008/03/13
- メディア: CD
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*1:引用注。ピーター・ガブリエルの3枚目のソロ・アルバム(1980年)冒頭の曲、"Intruder"。