ル=グウィン 『湿原で』

 2001年発表の書き下ろし短編。2と3の中間くらいの時代の話で、ハブナーの北西にあるセメルという島を舞台にしている。
 長い旅を終えた主人公イリオスは、湿原の中の村にたどり着く。その村では牛の伝染病が流行っていて、彼はその治療師として活躍する。だが、彼には暗い過去があり、正体を隠している。村の女メグミはそんなイリオスを家に泊らせる。

  • というのが前半のストーリー。ここまでは完璧である。
  • ところが、後半、ゲド(ハイタカ)が登場して、全部ぶち壊しにしてしまう。

 メグミが台所の仕事にかかると、タカはその時どきにごく自然に手を貸したので、彼女はよその男たちはここの男たちよりみんな家事がうまいのだろうか、と考えはじめたほどだった。男は話しやすくもあった。


 ル=グウィン 『湿原で』

  • 大賢人ゲドが登場して何を始めるかと思えば、台所の手伝いと、そして10ページ以上にわたって延々と続くセリフ(ほとんど彼一人でしゃべっている)である。それだけ。それ以外、ほとんど何もしないのだ。
    • ゲドはメグミに向かって、イリオスの過去と正体を暴露する。
    • 彼はイリオスを連れて帰ろうとするのだが、断られてしまう。

「やれやれ、イリオス、わたしは冬のさなか、そなたをさがして、こんなに遠くまで来たのに、どうやらひとりで帰るしかないようだな。」

  • こういうのを、《おじゃま虫》 というのではないのかね。


ドラゴンフライ アースシーの五つの物語―ゲド戦記〈5〉 (岩波少年文庫)

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