ル=グウィン 『ドラゴンフライ』
『ドラゴンフライ』 は1997年に発表された130ページほどの短編小説。アンソロジー 『伝説は永遠に』(ハヤカワ文庫 asin:4150202826)に収録されたことがある。旧邦題は 『トンボ』。
時代は4の数年後。ハブナーの東にあるウェイ島に生まれ育った少女ドラゴンフライ(アイリアン)は、魔法は使えないものの、何か不思議な力を持っていると確信し、女人禁制の島ロークへ向う。
- 従来の主人公たちは何らかの目的を持って旅を続けていたが、アイリアンがやっていることは 《自分探し》 である。
- 彼女の生い立ちから旅立ちまでの前半と、《ロークの学院》 に到着してからの後半とでは、主人公以外の登場人物が総入れ替えになっていて、ほとんどつながりが見られない。
- 《学院》 を司る9人の長は、女性の受け入れと 《学院》 の運営を巡って対立する。女人禁制を貫こうとする保守派のリーダーは、呼び出しの長トリオンである。
- 4のレビューで、僕は以下のように書いた。
3の最終章で、黄泉の国から帰った呼び出しの長トリオンが病み上がりの姿で登場しているが、4で 「トリオンは黄泉の国から戻ってこなかった」 とレバンネンが語っているのは矛盾。
- この謎の真相が、ようやくここにおいて語られる。曰く、
- トリオンは黄泉の国へ行き、そこから戻ってきた。
- ゲドが竜の背に乗って飛び去った後、再びトリオンは倒れ、生死をさまよった。(レバンネンが目撃したのはここまで。)
- レバンネンがハブナーへ去った後、ようやくトリオンは息を吹き返した。
- よみがえったトリオンは、いきなり 「魔法の力を失ったゲドに代わって、新しい大賢人を選ばねばならない」 と主張し、自らその名乗りをあげた。
- というのが、反トリオン派の長たちの言い分である。
- いくらなんでも、これは後付けの理屈であって、4を書いた時点で作者はこんな展開を想定していなかっただろうと思われる。
- しかも、3と4ではほとんど活躍しなかったトリオンが、ここへ来て突然、敵方のボスになるとは!
- 結末はネタバレになるので書かないけれど、4と似たようなものだ。アイリアンはどこかへ去っていく。そして、6でふたたび登場するらしい。
- 《ロークの学院》 が女人禁制になったいきさつについては、巻末に収録された作者による 「アースシー解説」 に詳しく書かれている。
ドラゴンフライ アースシーの五つの物語―ゲド戦記〈5〉 (岩波少年文庫)
- 作者: アーシュラ・K.ル=グウィン,ディビッド・ワイヤット,Ursula K. Le Guin,清水真砂子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/03/17
- メディア: 単行本
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