孫引きはなぜいけないのか

http://d.hatena.ne.jp/y_arim/20090820/1250785871

よしもとばななさんの「ある居酒屋での不快なできごと」 - 活字中毒R。
 活字中毒Rの記事ってのはこれな。こいつを起点に議論だかなんだか知らんものがはてな界隈で進んでいくうち、いったい元のエッセイに当たったやつはどれだけいるんだろう? と気になってた。見るからに抄録なんだけど、誰かひとりくらい読んだのかよ? なんで元ネタ自体たいして読まれもしないまま(『読む気もない』と開き直るバカまでいやァがる)どんどん話膨らませて、ばなな叩きまで進行してんだ? と。

 孫引きに基づいた批判イクナイ! 原典を読め! という有村さんの指摘は正しい。

孫引きがいけない理由 - BLOG STATION
 「孫引き」 でググると一番上に表示されるページは僕が以前書いたものだ。今回と全く同じ問題だと思うので、要点をまとめて再掲しよう。

  • 孫引きとは、A の著作(原典)を B が引用したものを、さらに C が引用することをいう。
  • 一般に、学術論文を書く際には、間接引用(孫引き)は良くないとされている。(参考リンク:社会調査工房 - 社会調査の方法 - 7-1-3 引用 -文中における形式-
  • しかし、以下の理由により、学術論文ばかりでなく、個人サイト、ブログにおいても、孫引きは良くないと僕は考える。
  • A の著した原典を読まないまま、C が原典について論評した場合、次のような問題が発生する。
    • C は、B による引用箇所しか読んでいないため、A の著作全体がどのような主旨で書かれたものなのか、あるいは前後の文脈がどのようなものであるか、知らないまま、論評することになる。
    • C は、B というフィルターを通してのみ、A を理解しようとする。このため、誤読や的外れな論評を行ってしまうことがある。
    • C は原典に当たる手間を惜しんでいるだけである。これは単なる怠慢以外のなにものでもない。
    • さらに、C を読んだ D が A の著作について、論評する場合がある。そうなると、これは最早、デマに近いものとなる。
  • このような理由で、孫引きは極力、避けるべきなのである。孫引きを行った者は、それを行ったが故に、批判されても仕方ないのだと思う。
  • 原典が、古文書など入手困難なものである場合は、孫引きが認められるケースもあるが、そういうのは、あくまでも例外である。
  • また、原典が外国語で書かれたものである場合は、翻訳者を明記するべきだ。野崎孝訳と村上春樹訳の『ライ麦畑』は、別物なのだから。

 学術論文や紙媒体の文章の場合、孫引きは避けるべきというのは昔からルール化されているものと理解している。他方、ウェブ上の文章に関しては、孫引きを理由に批判されることが比較的少ないのではないだろうか。
 そこまで厳密にしなくても、という考え方もあるのかもしれないが、僕は 《ウェブ時代の古くて新しいマナー》として考慮すべき問題だと考えているのである。