無人島に持っていく3冊

 無人島はリゾートではない。我々が無人島にたどり着くのは、船が難破したようなときだけであり、当然そこでは水や食料を探し出し、大自然の猛威と戦うサバイバルな状況を想定することが必要である。なぜかヒモと布きれとナイフは持っているので、釣竿を作ったり、簡単なテントを作ったりする。水は雨水を濾過して飲み、果実をとって食べる。しばらくすると、落ち着いてきて、一日中魚釣りをするようになり、旗のようなものを作って遠くの船影に向かい 「おーい!」 と叫んでみたりする。照りつける灼熱の太陽。ひまだ。ひますぎて気が狂いそうだ。ふと気がつくと、ポケットに3冊の文庫本が入っている。当分この本たちを読んで気をまぎらすことにしようか。
 ……というようなシチュエーションで読みたい3冊。
 条件は、何度読んでも飽きがこないこと。これだけである。間違って恩田陸の本などがポケットから出てきた場合は、読み終わったあと焚きつけにすると良い。そうすれば一日くらいは長生きできるかもしれない。


ボートの三人男 (中公文庫)

ボートの三人男 (中公文庫)

 19世紀イギリスのユーモア小説の決定版。3人の男と1匹の犬がボートに乗ってテームズ川を旅するという、本当にそれだけの話だが、何度読んでも笑える。モンティ・パイソンジョン・ベルーシが好きな人なら、なお楽しめると思う。


血の収穫 (創元推理文庫 130-1)

血の収穫 (創元推理文庫 130-1)

 1920年代に発表されたハードボイルド小説の古典。私立探偵である名無しの主人公 「おれ」 が、街のギャングたちの抗争に火をつけ、殺し合いをさせる。最後は登場人物のほとんどが死ぬ。実に殺伐とした話だが、繰り返し読むと味が出てくる。古臭い翻訳も、今読むといい感じ。


津軽 (新潮文庫)

津軽 (新潮文庫)

 昭和19年大東亜戦争の真っ最中に発表された太宰 治の紀行文(実はほとんどフィクション)。太宰が故郷、津軽を訪れたときのことを描いた大傑作である。大いに笑い、感動に涙し、最後はスパッと終わる。