2009-12-14から1日間の記事一覧

大江健三郎 『不意の唖』

外国兵を乗せたジープが、谷間の村へやって来た。外国兵たちが村の子供等と川で水浴びをしている時、一緒について来た通訳の男の靴が、何者かに盗まれる。靴は川に流されたのではないかと言う者もいたが、周囲を探したところ、草むらの中から鋭利な刃物で切…

大江健三郎 『人間の羊』

冬のはじめ、夜ふけのバスの車内で、酔っ払った外国兵たちが日本人乗客に絡み始める。外国兵はナイフをかざし、後部座席の乗客と運転手の下半身を露出させ、彼らの尻を叩き、笑いながら歌う。 羊撃ち、羊撃ち、パン パン と彼らは熱心にくりかえして訛りのあ…

大江健三郎 『戦いの今日』

《かれ》 と弟の二人は、米軍キャンプの近くで兵士にパンフレットを配っている。その作業は、大学の友達の友達から頼まれたもので、彼らはパンフレットを作った責任者のことを知らなかった。 ……パンフレットは朝鮮戦争に出かけて行く若い知識人の兵隊によび…