2009-05-29から1日間の記事一覧

青べか馴らし

《私》 は近所の人たちから、《蒸気河岸の先生》 と呼ばれている。蒸気河岸というのは船着場のことで、そのあたりに住んでいるからだ。 おんぼろ小舟をまんまと売りつけられた先生は、高い代金を払って、青べかを修理する。しかし、青べかは 「まぬけなぶっ…

続・鬼

鬼 - 蟹亭奇譚の続き。 持病の関節炎が疼きはじめた。仕事を早退し、帰りの電車では優先席に座り、ほうほうの体でかかりつけの医者の元へたどり着く。医師は患部の足首へ注射する。待合室まで響く僕の叫び声が聞こえる。 雨の中、痛む足をひきずりながら帰宅…

「青べか」を買った話

『青べか物語』 は昭和35〜36年に発表された長編小説。 昭和の初め頃、東京湾に面した小さな漁師町、浦粕(うらかす)に住んだ若手作家の 《私》 は、奇妙な老人に声をかけられ、おんぼろな小舟をまんまと売りつけられてしまう。浦粕というのは、もちろん浦…