Bill Evans & Eddie Gomez / Intuition

Intuition

Intuition

  • 1974年11月7〜10日録音。
  • Bill Evans (p, el-p), Eddie Gomez (b)

 ドラムのマーティ・モレルが脱退した後、スタジオで録音されたピアノとベースのデュオ・アルバム。
 全8曲入り。(3) と (5) がエヴァンス作曲、ほかはスタンダードまたはカヴァー曲とクレジットされていて、すべてこの時点で新曲である。(ただし、(5) はスタンダード曲 "All The Things You Are" のタイトルをひっくり返しただけの同じ曲である。)
 ビル・エヴァンスは大半の曲でエレピを使用。しかもトレモロ(音が左右に揺れるエフェクト。ローズ・ピアノに標準装備されている)を使いまくっているため、エレピの存在感ばかりがやけに大きい。しかし、エレピに関しては "The Bill Evans Album" (1971年)の中でやりつくしている感じがして、当時はこういうのが流行っていたのかもしれないが。あまり新味は感じられない。一方、ゴメスのベースは低音域を大幅にカット。中高域にクセのあるソロを長々と聞かせている。
 全体に演奏内容よりも選曲に良さを感じる1枚。BGM向けかも。

Bill Evans / Blue In Green

Blue in Green

Blue in Green

  • 1974年8月?日録音。
  • Bill Evans (p), Eddie Gomez (b), Marty Morell (ds)

 カナダのキャンプ・フォーチュンで行われたコンサートのライヴ盤(1991年発表)。放送用音源として録音されたため、音質が非常によく、演奏内容も充実している。
 全9曲入り。"Blue In Green" と "So What" が収録されているのが売りなのだと思うが、個人的にはその他の曲のほうがクオリティが高いと思っている。
 エディ・ゴメスのベースがよく鳴っている。ピックアップを使っていないのだろうか?

The Bill Evans Trio featuring Stan Getz / But Beautiful

But Beautiful

But Beautiful

  • 1974年8月9, 16日録音。
  • Stan Getz (ts), Bill Evans (p), Eddie Gomez (b), Marty Morell (ds)

 ビル・エヴァンス・トリオがテナー奏者スタン・ゲッツをゲストに迎えた再会セッションとなるライヴ盤(1996年発表)。アマゾンのレビューによると、1964年に行われた最初のスタジオ・セッションのアルバム "Stan Getz & Bill Evans" が発表(Verveが勝手に発売したらしい)されたのは1973年とのことなので、その後に行われたヨーロッパ・ツアーを録音したのだろう。曲目も64年録音盤のレパートリーが中心になっている。
 本ライヴ盤は全10曲入り。(1), (2), (9), (10) は8月9日、オランダでの録音。(3)〜(8) は16日、ベルギーでの録音である。ピアノとベースの音が割れている箇所があって少し気になるが、演奏内容は抜群。(2) では勝手にブルースを吹き始めたゲッツに対して、エヴァンスが怒り、演奏を止めてしまうハプニングもあるが、一方、(7) と (8) ではゲッツがエヴァンスの誕生日を祝っていたりするほほえましい場面もある。
 ベストは、テナーとピアノのデュオによる (7) だろうか。ピアニスト、ジミー・ロウルズ作曲のカヴァーだが、当時のゲッツの十八番だった名曲である。エヴァンスは、後にこの曲を自らのトリオでも録音するのだが、発表されたのは彼の死後であった。

Bill Evans / Symbiosis

Symbiosis

Symbiosis

  • 1974年2月11〜14日録音。
  • Bill Evans (p, el-p), Eddie Gomez (b), Marty Morell (ds), Claus Ogerman (arr, cond), etc.

 ビル・エヴァンス・トリオとクラウス・オガーマン(作・編曲)率いるオーケストラとの共演盤。
 CD は5トラック入りとなっているが、全体が二つの楽章から構成されていて、第1楽章〜モデラートはエレピ中心、第2楽章〜ラルゴはアコースティック・ピアノ中心になっている。
 オガーマンとの共演は3回目である。彼が作・編曲を手掛けているだけあって、エヴァンス色はやや退いている感じがする。クラシック(というよりアヴァンギャルドな現代音楽)とジャズ(というよりフュージョンに近い)の接点みたいなところを目指したのだと思うけれども、結果的にプログレッシヴ・ロックに近いところへ着地したのではないだろうか。
 シリアスな作品だとは思うが、今聴くと上品な BGM に聞こえてしまうのはしかたないのかもしれない。

Bill Evans / Re: Person I Knew

リ・パーソン・アイ・ニュー(紙ジャケット仕様)

リ・パーソン・アイ・ニュー(紙ジャケット仕様)

  • 1974年1月11〜12日録音。
  • Bill Evans (p), Eddie Gomez (b), Marty Morell (ds)

 "Since We Met" と同日にヴィレッジ・ヴァンガードで録音されたライヴ盤。ただし、こちらが発表されたのはエヴァンスの死後である。
 全8曲入り。"Since We Met" とちがって、なぜかモノラル盤であり、客席の話し声がときどき聞こえたりするが、けっして音質が悪いわけではない。むしろ、ライヴの臨場感をよく伝える音だと思う。演奏内容も抜群である。
 ベストはスロー・ナンバーの (3) "Alfie" だろうか。強弱の差が激しい曲だが、エヴァンスは実にドラマティックに盛り上げていく。

The Bill Evans Trio / Since We Met

Since We Met

Since We Met

  • 1974年1月11〜12日録音。
  • Bill Evans (p), Eddie Gomez (b), Marty Morell (ds)

 ニューヨーク、ヴィレッジ・ヴァンガードにおけるライヴ盤。レコード発売順でいうと、Fantasy レーベル移籍第1作ということになるのだろうか。(今ひとつ自信がないのだけど。)本アルバムのような気合、気迫に満ちた作品を発表するということは、さまざまな製作背景のようなものがあるのではないかと思うのである。
 オリジナル LP は全7曲入り(CD は1曲追加)。前半4曲がすべて4分の3拍子の楽曲である(ボーナストラックも3拍子だ!)。元々ワルツを好んだビル・エヴァンスだが、この選曲は極端である。だが、似たような感じにならないところが、エヴァンスの優れたところであって、本作の優れた点だといえるだろう。
 さて、1950〜60年代のビル・エヴァンスのピアノは(極端にいうと)鍵盤の真ん中へんばかり使って弾いているような感じで、音が中音域に集中しているような傾向があった。また、60年代後半以降の、特にライヴにおける演奏は左手のコードが強すぎて、全体のバランスを損なう場面が多かった。本アルバムでは、この2点が大幅に改善されており、彼のピアノ演奏スタイルが大きく変貌をとげているのである。
 エディ・ゴメスのベースはピックアップを装着しており、イコライザーで低域をブウウンと鳴らしている。また、マーティ・モレルはブラシを多用、3拍子の楽曲にはよく合っていると思う。本作は、この3人による到達点である。

Bill Evans / Half Moon Bay

At Half Moon Bay

At Half Moon Bay

  • 1973年11月4日録音。
  • Bill Evans (p), Eddie Gomez (b), Marty Morell (ds)

 カリフォルニアにおけるライヴ録音で、エヴァンスの死後発表された作品。Half Moon Bay というのは演奏会場の名前だろうか? よくわからない。わからないといえば、本作は正規盤にしては音質が悪く、元々ブートレッグだったのかもしれないが、現在は正規の Milestone レーベルから発売されていて、そのへんの出自が不明なアルバムでもある。
 さて、CD は10トラック入り。(1) はエヴァンスによる MC (メンバー紹介)で、演奏が始まるのは (2) からである。「ワルツ・フォー・デビー」、「枯葉」、「いつか王子様が」といった超人気曲の再演が含まれているのが見逃せない点だろう。だが、全体にモヤがかかったような録音状態で、決して手放しでひとに勧められるようなアルバムでないことも言い忘れてはなるまい。
 なお、エディ・ゴメスは本作の頃から、ピックアップを使用するようになったようだ。