Bill Evans / Alone

アローン+2

アローン+2

 ビル・エヴァンスが初めて発表した全編ピアノ・ソロによるアルバムである。
 LP 発売時は全5曲入りで、A 面4曲、B 面1曲という構成だったが、CD 化の際に数曲追加されている。エヴァンスのオリジナル曲は収められていないが、全部新曲である。
 彼のソロ・アルバムはほかにもあるのだが、本作の特徴は左手で弾く低声部の大部分がベース・ラインを鳴らしていないことだろうか。完成されたアレンジにもかかわらず、ベース(あるいはドラムも)が加わる余地を残しているように感じられるのである。これは、エヴァンスのピアノが本来、トリオ演奏に特化したものであったこと、そこを敢えて独奏し切ることにより、独自の孤高(アローン)感を出していることに由来する。
 エヴァンスのコードワークは艶かしく、メロディ・ラインは美しく、リズムはスウィングする。緊張と弛緩、タフネスとリリシズムという一見相反する要素が常に同居している。
 もう一つ。本アルバムは録音状態がきわめて優れており、Verve 時代の作品中(いや、ひょっとしたら彼の全作品中)、最も音質の良い作品なのである。マイクがピアノに近くセッティングされているのだろう、楽器の音が左右に拡がり、そればかりかピアニストの息遣いまで聞こえるような気がする。