Miles Davis / Agharta

アガルタ

アガルタ

  • 1975年2月1日録音。
  • Miles Davis (tp, org), Sonny Fortune (as, ss, fl), Pete Cosey (g, synth, perc), Reggie Lucas (g), Michael Henderson (el-b), Al Foster (ds), Mtume (perc)

 1975年2月1日、大阪フェスティバル・ホールにおけるコンサート 《午後の部》 を収録した2枚組ライヴ盤。同日の 《夜の部》 は "Pangaea" に収録されている。
 このアルバム、何種類かヴァージョン違いが出ていてわかりにくいのである。まず、日本盤とアメリカ盤ではジャケットが違っている。日本盤(二人の女性の写真が使用されている)のジャケット・デザインは横尾忠則が手掛けたものだが、アメリカ盤はアナログ LP の時代から現在に至るまで、異なるイラストが用いられている。
 それから、2000年に発売された日本盤(DSD マスタリング)には、ロング・ヴァージョンが収録されている(現在は新旧両方出回っているようだ)。ロング・ヴァージョンは、CD1-(2) "Maiysha" が約1分長く(演奏が終わったところでもう一度始まる)、CD2 は約10分長い(ほとんどパーカッションとアンプのノイズが延々と続くだけなので、あまり意味はない)。そして、旧ヴァージョンにかけられていた深いリヴァーブがほとんど除去されている。
 本作『アガルタ』は同日のライヴ『パンゲア』と並んで、非常に評価が高いアルバムなのだけれども、演奏そのものの迫力は "Dark Magus" のほうが上だと思う。ただし、バンドとしてのまとまりは本作のほうに分があるかもしれない。
 新加入のソニー・フォーチュン(1939〜)のソロは、このバンドの70年代の歴代サックス奏者の中で断トツである。リズム感が抜群に良く、フレーズをむやみに崩さない。それでいて、迫力のあるソロを吹いているのだからたまらない。(フォーチュンのマイルス・バンド以外の参加作品はどれも凡作なので、『アガルタ』『パンゲア』は彼にとって生涯の最高作となるにちがいない。)
 それから、ジミ・ヘンドリックスの影響を受けているといわれるピート・コージー(1943〜2012)のギターだが、1975年の時点でジミヘン風などと呼ばれる時点でかなり古いと言わざるを得ない。当時のマイルス・バンドに欠かせないギタリストだったのは確かだと思うが、やり方が後ろ向きである。
 一方、レジー・ルーカス(1953〜)のギター・カッティングは今聴いてもクール。彼はその後、プロデューサーに転向し、ロバータ・フラックやマドンナなどを手掛けて成功をおさめた。
 マイケル・ヘンダーソン(1951〜)は本作では珍しくチョッパー(スラッピング)奏法を聞かせている。あいかわらずかっこよく、このバンドの中心人物だということがわかる。
 ちなみに、本アルバムは僕が初めて購入したマイルスのアルバムだ。肝心のマイルスの出番は少ないし、トランペットの音はヘナヘナだし、最初はがっかりしたものだが、今聴いてもがっかりしている。