ル=グウィン 『ゲド戦記3 さいはての島へ』
- 作者: アーシュラ・K.ル=グウィン,ゲイル・ギャラティ,Ursula K. Le Guin,清水真砂子
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2009/02/17
- メディア: 単行本
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- 15年ぶりくらいに再読。
- 少年アレンの人間的な成長の物語として読めば、シリーズ中最高作だと思う。
- だが、それ以外の部分はちょっと変な話である。例えば前半ホート・タウンが荒廃して人々が無気力になりハジア(麻薬)を食べている場面と、後半の黄泉の国の戦いの場面はどう考えてもつながっていない。戦いの勝利が麻薬問題を解決するとは思えないのである。物語に必要な一貫性を欠いているのではないか?
- 《海洋冒険小説》 みたいなのが好きなので、航海の場面(かなり長い)は満足。南へ進むと見たことのない星座が現れる、というような、ファンタジーとは関係ない部分に興奮してしまう。
- 『ゲド戦記』 に描かれる海の中にはモンスターが登場しない。ごく普通の海である。
- 航海の描写そのものについては、『朝びらき丸 東の海へ』 のほうがファンタジーとしては上手(うわて)かもしれない。(『ナルニア国ものがたり』 ではあれが一番好き。)
- ほとんどの場面はアレンの視点で描かれているのだが、9章 「オーム・エンバー」 の後半、ロークの学院で 《呼び出しの長トリオン》 が倒れる短いエピソードが挿入されている。この場面、全く余計であり、トリオンとゲドは後で再会するものの、何の役にも立っていない。
- 2はメートル法が使われていたが、3では1と同じく、ヤード・ポンド法が使われている。原書ではどうなってるんだろう?
- ストーリーの一貫性、無駄のない構成という点で、2のほうが優れていると思った。以前読んだときは全くそんな風に思わなかったので、新たな発見である。