猫の言葉と人の言葉 (2)

 自分の家で飼っている猫を呼んだら、反応するのは当たり前のようなものである。
 では、よその家の猫の名前を呼んだらどうなるのか?
 近所の家で飼われている白黒鉢割れ(うちのと同じような模様のやつ)の猫がいる。以前からときどき外で見かけていたのだが、チョビという名前だということを最近知った。
「チョビはね、名前を呼ぶとごろんと転がっておなかを見せるのよ」と家人が言う。
 仰向けになってお腹を見せる、というのは、最も無防備な体勢である。我が家の猫たちはよくやっているが、外で他人の前でそれを行うのは珍しいと思う。ひょっとしたら、飼い主がそういう風にしつけているのではないだろうか。
 ある日、僕はチョビを見かけたので、名前を呼んでみた。
「チョビ!」
 チョビは転がった。ごろんと転がる、というような生易しい転がりかたではなく、派手にズッコケていた。僕はそれを見て、吉本新喜劇みたいだと思った。


 (つづく)


※記事タイトルを変更しました。


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