遠藤周作 『海と毒薬』
- 作者: 遠藤周作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1960/07/15
- メディア: 文庫
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- 前半 「第一部 海と毒薬」 の緊張感に満ちた展開に対し、後半 「第二部 裁かれる人々」 は最後までだらだらしている。
- ヒルダさんというドイツ人妻は正義感あふれるキャラクターとして登場するのだが、途中から出て来なくなってしまう。中途半端ではないか。
- 戸田医師が学生時代を回想するエピソードは、太宰治 『人間失格』 にそっくりである。
- 社会問題を取り上げておきながら、社会の問題として掘り下げることなく、個人の倫理や価値観のみを追求している。題材となった生体解剖事件から十数年しか経っていない時期に書かれた小説であり、事件そのものを十分に咀嚼しきれなかった恨みはあると思う。
- 結末が尻切れトンボである。これは続編がないと収拾がつかないだろう、と思っていたら、勝呂医師を主人公とした 『悲しみの歌』(1977年)という作品が発表されていた。(悲しみの歌 - Wikipedia)
- 新潮文庫巻末解説には、未だに続編が書かれていないというようなことが記されているが、この解説は1971年に書かれたもの。解説自体が古くなってしまったのである。こういう文章は差換えて改訂したほうが良いのではないか。