川端康成 『古都』

「似てるなあ。」千重子には、熱いものが、つたわった。右と左に立ちかわってみて、「ほんまに、生きうつしの上や、へええ。」
「ふた子どすもん。」と、苗子は言った。
「人間はみんな、ふた子産んだら、どうどすやろ。」
「人ちがいばっかりして、お困りやさしまへんか。」……


 川端康成 『古都』 「冬の花

 幼い頃に生き別れた双子の姉妹に再会する、というだけのストーリーは単純すぎる。再会して、そこから先へ大きく展開するわけではなく、同じようなところをぐるぐる廻っているような話なのだ。(実際、同じ文章が使いまわされている箇所もある。)
 本作の読みどころは、むしろ京都の美しい四季折々の描写である。美しい美しいと何十回も繰り返されるのは少々くどいが、他の言葉では言い表せぬ美しさが感じられる。