ヘッセ 『デミアン』

  • 主人公シンクレールが年上の友人デミアンに出会い、次第に惹かれていく前半は、非常に面白い。ぞくぞくくるような面白さがある。
  • しかし、オルガン奏者ピストーリウスが登場する中盤あたりから、だんだん怪しげな雰囲気になっていく。秘密結社(らしきもの)の描き方が中途半端だからかもしれない。
  • デミアンの母エヴァ夫人のセリフ。高橋健二訳(新潮文庫)は硬すぎて、人間がしゃべっているのではないような感じ。彼女のセリフに限っては、実吉捷郎訳(岩波文庫)のほうが読みやすいと思った。
  • 第一次大戦中に書かれ、戦後に発表されたという点で問題小説なのだろうけど、当時、「ドイツ青年層から、空前の感激をもってむかえられたときく」(岩波文庫巻末解説)というのは、本当なのか疑問。
  • 多少なりとも色気のある 『車輪の下』 のほうが面白かった。