谷崎潤一郎 『人魚の嘆き・魔術師』

 大正6年に発表された谷崎の作品集は“大人の絵本”だった。

「人魚の嘆き」
 退屈な毎日を送る南京の貴公子が、地中海からやって来た(白人の)人魚に恋をする話。
 難解な漢語が多いのに、すらすら読める不思議な文体が魅力である。

「魔術師」
 浅草六区を思わせるサイケデリックで猥雑な街区(まち)のファンタジー
 >江戸川乱歩の 『人間豹』に、本作そのままのイメージの浅草六区が登場する。


 美しい挿絵は、水島 爾保布(みずしま におう) という画家によるもの。
 ビアズリーの 『サロメ』 の挿絵にそっくりだ。


人魚の嘆き・魔術師 (中公文庫)

人魚の嘆き・魔術師 (中公文庫)