三点リーダが多すぎる小説

 オフィーリアがハムレットにあてて書いた遺書。

かうして字を並べてゐれば、その中に夜が明けます。夜が明けたらと妾は念じてゐるのです。夜が明けさへすればみんなお終ひになる。何故って、さうなつたんだもの、はつきり、さうだと、わかるんだもの、どうぞうまく行きます様に、………………………………おや、おや、点々ばかり書いてゐて、どうする気でせう。女の手紙には、必度、点々があるものだ、と、あなたはおつしやる。ありますとも。点々だつて字は字です。あなただつて、気違ひは気違ひです。


 小林秀雄 『おふえりや遺文』

 女はおそろしい。いや、なんでもない。

小林秀雄全作品〈3〉おふえりや遺文

小林秀雄全作品〈3〉おふえりや遺文