東野圭吾を軽く10冊

 ただし順不同に。

『手紙』

手紙 (文春文庫)

手紙 (文春文庫)

 兄の犯した強盗殺人のため、社会から阻害され、ひたすら差別を受け続ける弟。

「差別はね、当然なんだよ」

 後半に登場する人物のこの一言に、作者の主張が集約されている。結末もすごく良い。


さまよう刃

さまよう刃 (角川文庫)

さまよう刃 (角川文庫)

 凶悪犯に愛娘を殺された父親による復讐譚。犯人を除くすべての人々が父親に共感しているのに、私刑は許されないというもどかしさがテーマ。
 『手紙』 とは逆に、犯人の登場場面が少なく、おまけ扱いになっている。


白夜行

白夜行 (集英社文庫)

白夜行 (集英社文庫)

 主人公の心理描写を敢えて書かないという手法は、ダシール・ハメット 『血の収穫』 に通じるものを感じる。 登場人物が多く、時代も場所も変化に富んでいるが、長いストーリーを一気に読ませる展開は見事としかいいようがない。 (だが、結末は暗い。)
 こんなに分厚い文庫本は持ち歩きにくいので、2冊に分けてほしいと思った。


『片思い』

片想い (文春文庫)

片想い (文春文庫)

 アメフト部の元部員たちが主要な人物として登場するのだが、だからといって日常会話の中にアメフト用語を連発されると、ニュアンスがさっぱりわからない。
 面白い小説だとは思うのだが、性同一性障害ジェンダーといったシリアスなテーマと、スポーツマンたちの(薄っぺらに見える)生き方に、どうにもかみ合わないものを感じた。


『悪意』

悪意 (講談社文庫)

悪意 (講談社文庫)

 最初から最後まで、どんでん返しの連続。 いやー、だまされました。(良い意味で。)
 (野々宮ならぬ)野々口、藤尾、美弥子、長野、静子など、登場人物の名前の多くが、夏目漱石の小説から引用されていることに気づいた。


『変身』

変身 (講談社文庫)

変身 (講談社文庫)

 脳移植を行ったら、臓器提供者の人格が乗り移ってしまった、というホラー風小説。同じようなテーマの逢坂 剛 『さまよえる脳髄』もおすすめ。


『分身』

分身 (集英社文庫)

分身 (集英社文庫)

 クローン人間というテーマは今読むとちょっと古い気がするが、二人の女性主人公のキャラクターが良い感じ。


『秘密』

秘密 (文春文庫)

秘密 (文春文庫)

 妻と娘が交通事故にあい、妻は死亡。ところが、意識を取り戻した娘の体に、妻の精神が乗り移ってしまった、という話。父親が娘とセックスしようとして失敗する場面が2回も出てくるが、なんで手コキしないのかと思っていた。(←読み間違いです。)


探偵ガリレオ

探偵ガリレオ (文春文庫)

探偵ガリレオ (文春文庫)

 オカルト風の事件を科学の力で解決する探偵ガリレオ・シリーズの連作短編集。「怪奇大作戦」 に近いものを感じる。
 福山雅治主演の TV ドラマ版と結末が違う作品が多いので、ドラマをすでに観た方もぜひ。


容疑者Xの献身

容疑者Xの献身 (文春文庫)

容疑者Xの献身 (文春文庫)

 ガリレオ先生に最強のライバル登場。
 犯人が誰なのか、最初からわかっているのに、使われたトリックが全くわからない。見事にだまされました。 映画化も楽しみ。