Thelonius Monk Quartet with John Coltrane At Carnegie Hall

Thelonious Monk Quartet with John Coltrane at Carnegie Hall

Thelonious Monk Quartet with John Coltrane at Carnegie Hall

 ジョン・コルトレーンが参加したモンク・カルテットのライヴ盤というのは、当初全く出ていなくて、なかば伝説化していたのだが、ファイヴ・スポットにおける私家版録音*1 が1993年に発表され、ようやく陽の目を見た。だが、私家版録音のあまりの音質の悪さに、演奏自体への評価が行われることのないまま、10年以上が過ぎたのである。
 本アルバムは、2005年にブルー・ノートから発表された公式な未発表ライヴ録音盤である。音質は A ランク。50年代のライヴ録音としては最高レベルだ。本作の発表からすでに10年近く経っているが、初めて聴いたときの驚きが忘れられない。物凄い演奏なのである。
 全9曲入り。(1)〜(5) は午後8時半からのステージ、(6)〜(9)は深夜0時からのステージの模様が収録されている。カーネギー・ホールという大舞台で、当夜は Thanksgiving Jazz というイベントの一環として演奏されたらしい。
 前半の5曲はややリズムがユルく、特にコルトレーンの吹くフレーズがテンポに合っていない場面がときどきあるようだ。これはもしかしたら、ステージが広いため互いの音がちゃんと聞こえていなかったのかもしれない。後半はセッティングを変更したのであろう、より緊密な演奏を聴くことができる。
 ベストは (7)。途中から突然アップテンポになり、全員火の玉と化したような演奏である。この "Sweet and Lovely" という曲はスタンダード・ナンバーなのだけれど、他のひとがカヴァーしているのを聴いたことがない。モンク作曲ではないから、当然モンク作品カヴァー集のたぐいにも収録されない。ほぼモンク自身の演奏以外では聴くことのできない隠れた名曲だと思う。

*1:この私家版録音は発表当時、1957年夏録音とクレジットされていたが、現在では1958年9月11日録音と改められている。