Miles Davis / Filles De Kilimanjaro

Filles De Kilimanjaro (Dlx)

Filles De Kilimanjaro (Dlx)

 1968年6月と9月のセッションを集めたスタジオ録音盤。メンバー・チェンジの前と後の録音にあたり、過渡的なアルバムとなっている。
 オリジナル LP は全5曲入り。最初 (1) と最後 (5) がチック・コリアデイヴ・ホランド加入後の新メンバーによる演奏で、それ以外は旧メンバーによるものである。(3) はマイルスとギル・エヴァンスの共作曲。ほかはマイルス作曲。
 全体におとなしめで地味な印象のアルバムである。すべての曲でエレクトリック・ピアノが使われているが、まだ実験段階という感じ。
 6月のセッションは 《黄金のクインテット》 最後のレコーディングとなった。メンバーの役割が以前とはがらっと変わっているのがよくわかる演奏だ。ウェイン・ショーターはグループのまとめ役ではなく、単なるソリストになっている。ハービー・ハンコックのエレピ(ローズ・ピアノ)は出番が少ない。ロン・カーターのエレクトリック・ベースは明らかに練習不足で、きちんとリズムをキープできていない。トニー・ウィリアムスのドラムは (1) 以外は別人のようにおとなしくなってしまっている。
 9月のセッションは新メンバーによる初のスタジオ録音。チック・コリアが弾いているエレクトリック・ピアノRMI Electra-piano という楽器で、音量・音圧ともに弱く、おもちゃみたいな音がする。アコースティック・ベースを弾いているデイヴ・ホランドフリー・ジャズ系の音楽が得意なイギリス人だが、本作における演奏はきわめて保守的で地味。
 2002年リミックス盤で追加収録されている (6) は (2) の別テイクで、ややテンポが遅い。旧盤で全体にこもりがちだった音質は、リマスター盤ではかなり改善されている。しかし、演奏内容が暗くて地味なのはどうしようもない。