Miles Davis / Miles In The Sky

Miles in the Sky (Reis)

Miles in the Sky (Reis)

 前年の欧州ツアー(ライヴ)からわずか2ヶ月後に製作開始されたスタジオ録音盤。初めて電気楽器が導入されていることから、以前はマイルスがロックの要素を取り入れた作品と言われていたようだが、現代の感覚で聴くとロックには程遠いし、フュージョンともまた違う。どちらかというと、モータウンサウンドに通じる R&B、ソウルの影響を感じさせる作品が何曲か入っている。
 オリジナル LP は全4曲入り。(1) と (4) は久しぶりにマイルス作曲作品。(2) はウェイン・ショーター作曲。 (3) はトニー・ウィリアムス作曲。
 1998年リミックス盤の追加トラック (5) は (3) の別テイク。(6) は (4) の別テイク。
 68年1月録音の (2) は、ギタリスト、ジョージ・ベンソンが参加。オクターブ奏法でリズムを刻んでいるのが目新しいところだが、ソロは目立たない。曲そのものは従来演奏されてきたのと同様、4ビートのジャズである。
 少しとんで5月録音の (1) は、ハービー・ハンコックエレクトリック・ピアノロン・カーターがエレクトリック・ベースを初めて演奏したといわれる8ビート曲。17分も延々と続く曲だが、ベースとドラムが不安定で、ときどきリズムがずっこける。おそらくぶっつけ本番だったのではないか。
 (3) は "Nefertiti" の延長線上というべきジャズ・ナンバー。トニーのドラムはあいかわらず激しいのだが、バンドのノリから完全にはみ出していて、ちょっといらついているような感じの演奏である。(特にハイハットがうるさく感じる。)
 (4) は4ビートと8ビートが交互に登場する風変わりな曲。冒頭の4ビートのところのトランペットのフレーズがこの曲のテーマだとばかり思っていたのだが、別テイクの (6) にはこのパートが入っていない。また、(4) のテナー・ソロはかなり弱々しくてドラムの音にかき消されてしまっている。トニーはもはや、グループとしてのまとまりなど無視して、好き勝手に暴れているような演奏だ。一方、(6) のショーターはパワー全開。どう考えても別テイクの (6) のほうが良い演奏だと思うのだけど、どうしてオクラ入りしてしまったのだろうか。
 1998年リミックス盤の音は低音域と高音域を強調した、いわゆるドンシャリ。(旧盤は手元にないのだが、そんなに大きな違いはないと思う。)リヴァーブはほとんどなし。全曲ともパワフルな演奏、サウンドなので、かなり体力が必要な音楽である。