Miles Davis / E.S.P.

Esp (Reis)

Esp (Reis)

 ウェイン・ショーターが参加した 《黄金のカルテット》 は1965〜67年の間に4枚のスタジオ録音アルバムを発表した。これらはいずれもハズレなしの傑作で、演奏内容、人気ともにマイルスにとって何度目かのピークとなっている。本アルバムはその第1弾で、ロスアンゼルスのスタジオで録音された作品である。
 全7曲入り。曲はすべてメンバーのオリジナルで、マイルスが1曲、ショーターが2曲、ハンコックが1曲、カーターが1曲、マイルスとカーターの共作が2曲となっている。(ロン・カーターが3曲も作曲しているのは本作だけだと思う。)
 セッション全体が、アドリブ・ソロよりもアンサンブルを重視した構成になっている印象を受ける。また、強いインパクトをもった曲が揃っているのも特徴だと思う。
 (2) は当時流行した8ビートのジャズ・ロック・ナンバー。ベースのリフが渋くて、トランペットとテナーの「ッパ!」というキメもかっこいい。V.S.O.P. などメンバーによって何度もカヴァーされているが、オリジナルを超えられないようだ。
 (3) はコード進行が複雑な3拍子の曲。同年3月に、ハービー・ハンコックはほぼ同じアレンジで再録音している(アルバム『処女航海』収録)が、聴きくらべるとなんとなく適当に吹いている感じのショーター、丁寧なコールマンという違いが明らかになる。
 レコードでいうとB面の1曲目にあたる (4) は、ドラム・ソロから始まる。60年代後半のライヴで頻繁にとりあげられた名曲である。
 元々音質の良いレコードだったが、1998年リマスター盤ではさらに音がクリアになっている。特にベースとドラムの音がきれいに感じる。
 60年代後半の4部作の中では、これが一番好き。個人的には、あらゆるモダン・ジャズの CD の中で、最も再生回数が多いアルバムである。